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2022 年度 実施状況報告書

中国通俗小説受容の完全な体系化に向けた研究――民間翻訳の本格導入による多面的解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K00287
研究機関東北大学

研究代表者

勝山 稔  東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80302199)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード民間翻訳 / 三言 / 白話小説 / 佐藤一郎 / 魚返善雄 / 今東光 / 宮原民平
研究実績の概要

本年度では近代日本に於ける『警世通言』卷28「白娘子永鎭雷峰塔」『警世通言』卷32「杜十娘怒沈百寳箱」『醒世恆言』卷4「灌園叟晩逢仙女」の翻訳事例について分析に注目した。そして「白娘子永鎭雷峰塔」では佐藤一郎訳と松枝茂夫訳の関係を、「杜十娘怒沈百寳箱」では中国文学大観の翻訳作業における今東光と宮原民平の関係を、「灌園叟晩逢仙女」では、発見された魚返善雄訳を中心に分析を行った。
魚返善雄と佐藤一郎は、アカデミア側から厳格な『今古奇觀』の現代語訳の刊行を行い、支那愛好者の翻訳の不備を修正し、趣味的翻訳者が読み切れていない箇所のより正確な理解を示している。彼らの高い翻訳水準は、支那愛好者から大学研究者へという翻訳者層の変化と見做すことができる。
また今東光自身は、大学の研究者ではないが、特殊な白話表現を的確に理解しており、当時の翻訳水準に比べて極めて完成度が高かった。その要因は二つ考えられる。①本翻訳所収の『支那文學大觀』の出版構想に「芸術と学術の統合」があり、原文註釋担当として大学研究者が参画したこと。そして②『今古竒觀』註釋を担当した拓殖大学教授・宮原民平は、豊富な中国現地体験を持ち、当時の大学研究者の中でも卓越した白話の理解能力があったことが、同作品の翻訳水準の向上に繋がったものと思われる。
これらの分析により、支那愛好者から大学の研究者による翻訳へという翻訳者層のパラダイムシフト現象を多角的・立体的に分析することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初計画に比べて5割程度早いペースで分析作業が進んでいるから。

今後の研究の推進方策

既に今後発表予定の論文を2本完成させており、極めて順調に研究は進捗している。

次年度使用額が生じた理由

6000円ほどの端数が生じたが、今後の書籍購入で充足する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 近代日本に於ける『警世通言』卷32「杜十娘怒沈百寳箱」の受容について――今東光訳「珠を擲つ(杜十娘)」(1926)を中心に――2023

    • 著者名/発表者名
      勝山稔
    • 雑誌名

      国際文化研究

      巻: 29 ページ: 1-20

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 近代日本に於ける『醒世恆言』卷四 「灌園叟晩逢仙女」の受容について――発見された魚返善雄訳(1948)を中心に2022

    • 著者名/発表者名
      勝山稔
    • 雑誌名

      国際文化研究科論集

      巻: 30 ページ: 1-23

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 近代日本に於ける『警世通言』卷二八 「白娘子永鎭雷峰塔」の受容について――佐藤一郎訳「白蛇伝」(1963)を中心として 近代日本に於ける『警世通言』卷二八 「白娘子永鎭雷峰塔」の受容について――佐藤一郎訳「白蛇伝」(1963)を中心として2022

    • 著者名/発表者名
      勝山稔
    • 雑誌名

      国際文化研究科論集

      巻: 30 ページ: 96-116

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 近代日本に於ける『醒世恆言』卷四 「灌園叟晩逢仙女」の受容について2023

    • 著者名/発表者名
      勝山稔
    • 学会等名
      海域交流と国際文化学会
  • [学会発表] 近代日本に於ける『警世通言』卷32「杜十娘怒沈百寳箱」の受容について2022

    • 著者名/発表者名
      勝山稔
    • 学会等名
      海域交流と国際文化学会

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公開日: 2023-12-25  

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