• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

次世代の翻刻校訂モデルを搭載した中世歌合データベースの構築と本文分析の実践的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K00303
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

加藤 弓枝  名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (10413783)

研究分担者 田口 暢之  鶴見大学, 文学部, 准教授 (30825576)
海野 圭介  国文学研究資料館, 研究部, 教授 (80346155)
幾浦 裕之  国文学研究資料館, 古典籍共同研究事業センター, 特任助教 (30846407)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードTEI / 中世歌合 / 石清水社歌合 / 題詠
研究実績の概要

歌合は勅撰集に次いで和歌史に重要な位置を占めている。平安時代の歌合については、萩谷朴『平安朝歌合大成 増補新訂』(同朋舎出版、1995~96年)が研究の基礎を築いた。しかし、鎌倉時代以降の歌合はいまだ諸本や本文の研究が十全とは言えない。そこで本研究課題では、三千首の和歌を番えた『千五百番歌合』を中心に、中世前期の歌合に書誌学・文献学的検討を加え、言わば『平安朝歌合大成』の続編作成を目指し、校異のみならず諸本の画像や本文も表示できる「中世歌合データベース」を公開することを目的とする。
また、古典籍のデジタル画像公開が進み、AIによるくずし字解読が可能となりつつある今、デジタル時代の翻刻がいかにあるべきかを検討し、歌合版の翻刻校訂モデルをTEI(テキスト・エンコーディング・イニシアチブ)ガイドラインに則って構築する予定である。このように、デジタル人文学と日本文学の研究手法を融合させることで、古典文学における次世代の基礎的研究を例示するとともに、儀礼・身分という新しい見地も含めた内容分析を通して、中世前期歌合の成立・享受の過程とその意義を解明することを計画している。
初年度は歌合の基本構造をTEI/XML形式でマークアップする方法について検討した。具体的には中世和歌のひとつの到達点とされる『新古今和歌集』が成立した13世紀初頭の『石清水社歌合』を取り上げた。その結果、歌合の基本構造に加え、中世和歌の基本的な創作方法である題詠の表現形式をマークアップする方法を考案し、マークアップによって和歌作品の読解を深め、可視化し、デジタルテキストとして残すことができる方法を提案した。また、TEIになじみのない日本文学研究者向けのプレゼンテーションを国際シンポジウムで実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題では『千五百番歌合』をTEI/XML形式でマークアップし、データベース公開することを目標のひとつとしている。『千五百番歌合』は膨大な歌合であるため、まずは同時代前後に成立した作品で、かつ比較的分量が少なく諸本も多くない歌合を取り上げることで、歌合の基本構造のマークアップ方法を検討した。具体的には『石清水社歌合』の本文をTEI/XML形式でマークアップする方法を考察した。
なお、研究成果は、国際シンポジウム「古典の再生:The Revival of the Classics」(2023年2月11日(土)~12日(日)、京都産業大学むすびわざ館ならびにオンライン)の初日に行った特別プレゼンテーション「古典本文をWEBに載せる:TEIガイドラインに準拠したテキストデータ構築」(発表者:幾浦裕之・藤原静香、永崎研宣、司会:加藤弓枝)、ならびに情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会第132回研究会発表会(2023年5月20日(土)、亜細亜大学)の研究発表「題詠表現に着目した中世歌合の構造化と提示手法に関する試み:建仁元年『石清水社歌合』を事例として」(発表者:幾浦裕之・永崎研宣・加藤弓枝)で報告した。また、関連資料調査や文献複写も行うなど、おおむね予定通り研究を進めている。

今後の研究の推進方策

初年度は歌合の基本構造をTEI/XML形式でマークアップする方法について検討した。2023年度は新たな歌合ならびに関連資料を取り上げ、歌合資料のより良いマークアップ方法を検討する。また、引き続き『千五百番歌合』の諸本調査を行い、データベースの基盤となる本文の構築、ならびに関連する情報を整理する。
さらに、TEI/XML形式でマークアップした歌合データを表示・閲覧する際に、もっとも適切だと考えられるビューワの開発についても検討を開始する。歌合のみならず和歌全般の表示にも用いることが可能な「歌合ビューワ」開発を目指し、歌合資料の構造分析を進めることで、いかなる機能が必要となるのか考察する。

次年度使用額が生じた理由

計画では初年度にビューワの外注を予定していた。しかし、ビューワの機能を確定させるためには、複数の歌合資料に関してその構造検討を先に行う必要がある。よって、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (22件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 藤島宗順『詠草留』(安永六年分)解題と翻刻2023

    • 著者名/発表者名
      大谷俊太, 山中延之, 加藤弓枝, 大山和哉, 藤原静香
    • 雑誌名

      国文論藻

      巻: 22 ページ: 29-57

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 名古屋の名所:歌枕とコンテンツ・ツーリズム2023

    • 著者名/発表者名
      加藤 弓枝
    • 雑誌名

      人間文化研究所年報

      巻: 18 ページ: 11-14

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 『六条修理大夫集』注釈(三)2023

    • 著者名/発表者名
      田口暢之
    • 雑誌名

      鶴見日本文学

      巻: 27 ページ: 1-34

  • [雑誌論文] 建仁元年『石清水社歌合』注釈2023

    • 著者名/発表者名
      田口暢之
    • 雑誌名

      鶴見大学紀要(第1部日本語・日本文学編)

      巻: 60 ページ: 1-54

    • DOI

      10.24791/00001303

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 『たまきはる』の成立と奥書:定家と女房の書写活動との関連性2023

    • 著者名/発表者名
      幾浦裕之
    • 雑誌名

      日本文学

      巻: 72-2 ページ: 25-35

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 『国書総目録』と調査カード情報のデジタル化の展望2023

    • 著者名/発表者名
      幾浦裕之
    • 雑誌名

      ふみ 「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」ニューズレター

      巻: 19 ページ: 6-7

  • [雑誌論文] 古典に参加する教材:鑑賞の主体性に気付かせる2023

    • 著者名/発表者名
      幾浦裕之
    • 雑誌名

      ひろば 鶴見大学国語教育研究 別巻

      巻: 15 ページ: 5-6

  • [雑誌論文] シンポジウム 「〈見せる/魅せる〉近世文学」報告2022

    • 著者名/発表者名
      金子 馨, 長田 和也, 中西 保仁, 林 知左子, アレッサンドロ ビアンキ, 南 清恵, 加藤 弓枝, 木越 俊介
    • 雑誌名

      近世文藝

      巻: 116 ページ: 43-57

    • DOI

      10.20815/kinseibungei.116.0_43

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] くずし字による古典教育の試み(7) : 和本バンクを活用した出前授業2022

    • 著者名/発表者名
      加藤 直志, 加藤 弓枝, 三宅 宏幸
    • 雑誌名

      名古屋大学教育学部附属中・高等学校紀要

      巻: 67 ページ: 105-116

    • DOI

      10.18999/bulsea.67.105

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 教育現場への古典籍無償貸出プロジェクト「和本バンク」2022

    • 著者名/発表者名
      加藤 弓枝
    • 雑誌名

      カレントアウェアネスE

      巻: 434 ページ: ー

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 絵入百人一首の出版:女子用往来物を中心に2022

    • 著者名/発表者名
      加藤弓枝
    • 雑誌名

      百人一首の現在

      巻: ー ページ: 210-231

  • [雑誌論文] 配所における後鳥羽院詠:冷泉家時雨亭文庫蔵『後鳥羽院百首(遠島百首)』をめぐって2022

    • 著者名/発表者名
      田口暢之
    • 雑誌名

      中世文学

      巻: 67 ページ: 90-99

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 『百人一首』と『百人秀歌』の研究史―撰者説を中心に2022

    • 著者名/発表者名
      田口暢之
    • 雑誌名

      百人一首の現在

      巻: ー ページ: 89-109

  • [雑誌論文] 国文学研究資料館の調査カード:未来にむけた集成と利用2022

    • 著者名/発表者名
      幾浦裕之
    • 雑誌名

      人文情報学月報

      巻: 133 ページ: ー

  • [学会発表] 古典本文をWEBに載せる:TEIガイドラインに準拠したテキストデータ構築2023

    • 著者名/発表者名
      幾浦裕之、藤原静香、永崎研宣
    • 学会等名
      国際シンポジウム「古典の再生」
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 家集を出版する意味:江戸時代における私家集享受と書物観2022

    • 著者名/発表者名
      加藤弓枝
    • 学会等名
      名古屋市立大学人間文化研究所マンデーサロン
    • 招待講演
  • [学会発表] 書ををしむならはし:江戸時代における私家集板行と書物観2022

    • 著者名/発表者名
      加藤弓枝
    • 学会等名
      東海近世文学会9月例会
  • [学会発表] 歌人としての賀茂真淵:出版された家集を中心に2022

    • 著者名/発表者名
      加藤弓枝
    • 学会等名
      第2回賀茂真淵セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 超入門!和本・くずし字のトリセツ:和本のトリセツ2022

    • 著者名/発表者名
      加藤弓枝
    • 学会等名
      同志社大学古典教材開発研究センター第5回コテキリの会
  • [学会発表] 『たまきはる』の成立と奥書:定家と女房の書写活動との関連性2022

    • 著者名/発表者名
      幾浦裕之
    • 学会等名
      日本文学協会第41回研究発表大会
  • [図書] 未来を切り拓く古典教材2023

    • 著者名/発表者名
      同志社大学古典教材開発研究センター、山田 和人、加藤 直志、加藤 弓枝、三宅 宏幸
    • 総ページ数
      208
    • 出版者
      文学通信
    • ISBN
      978-4-86766-003-4
  • [備考] 国際シンポジウム「古典の再生」公式WEBサイト

    • URL

      https://kotensaisei.wixsite.com/website

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi