研究課題/領域番号 |
22K00306
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研究機関 | 皇學館大学 |
研究代表者 |
橋本 雅之 皇學館大学, 文学部, 教授 (70164796)
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研究分担者 |
大島 信生 皇學館大学, 文学部, 教授 (00194142)
齋藤 平 皇學館大学, 文学部, 教授 (70247758)
田中 康二 皇學館大学, 文学部, 教授 (90269647)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 国文学 / 書誌学 / 万葉集 / 注釈 / 近代写本 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の二つの項目を中心として研究を行った。 1、皇學館大学附属図書館が所蔵している澤瀉文庫古典籍のうち、おもに大正時代と昭和初期(昭和2年~昭和25年頃まで)に書写あるいは模写された古典籍資料について、8月・9月の夏休み期間中に書誌的な基礎調査を実施した。その結果、現在では貴重といえる東丸神社本「出雲風土記抄」や、京都大学本「歌経標式」の模写本など、今後の研究に有益と思われる資料が存在することが判明した。 2、研究代表者の橋本雅之は、上記京大本の調査のため京都大学に調査出張を実施した。また研究分担者の大島信生とともに、澤瀉文庫が所蔵している石井庄司書写「冠辞考」関連の資料調査のため、奈良県三郷町立図書館に所蔵されている石井庄司旧蔵書「桐陰文庫」の調査を実施した。これらの調査を通して、澤瀉文庫所蔵資料が持つ意義を明確にすることができた。その意義について以下に述べて今年度の研究実績報告のまとめとする。 明治以降に国文学者自身が書写した古典籍については、これまでさほど重視してこられなかったと言えるが、このような近代写本が持つ研究上の役割は小さくなかったと思われる。この分野に対する取り組みは、近代国文学研究史を考える上で大切であるにもかかわらずこれまで欠けていたと言わざるを得ない。このような課題を明確にしたところに今年度の研究の意義がある。このような結果を踏まえて、本年度の研究成果を令和4年12月7日から令和5年1月27日までの期間、本学附属図書館において資料解題を付した展示会を実施し、本学教職員のみならず一般の利用者に研究成果を公開した。令和5年度も、引き続き調査成果を展示会の形で実施するべく準備を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究がおおむね順調に進展していると考える理由は以下の2点にある。 1、研究実績の概要でも触れたように、令和4年度は資料の基礎的な調査を中心に実施した。8月から9月にかけて研究代表者、研究分担者全員で通算4日間の資料調査を実施し、研究代表者の橋本雅之は令和4年10月7日に京都大学へ、12月12日に奈良県三郷町立図書館への調査出張を実施し、また研究分担者の大島信生も12月12日に三郷町立図書館へ調査出張を実施した。これらの調査実績を踏まえて、令和4年12月から令和5年1月にかけて、近代写本を中心とした澤瀉文庫資料の展示会を附属図書館で実施したことにより、研究調査の進捗は、年度初めに予定していた目標をおおむね達成できたこと。 2、今年度の調査結果に基づく展示会を実施したことは、社会への研究成果の公表と還元という科学研究費研究の趣旨に叶った成果であること。 以上、2点の具体的研究活動によって、今年度の研究調査は、おおむね順調に進展したと認められる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5度は、以下の方針に基づき実施する。 1、令和4年度の研究調査を踏まえて、萬葉集および伝来に注目すべき由来を有する古典籍の写本・版本を中心とした研究を進めていく予定である。 2、具体的には、『校本萬葉集』にも重要な写本として名がみえる、御巫本「萬葉集」(写本)、井上頼圀旧蔵「活字無訓本萬葉集」(版本)、チェンバレン・上田万年旧蔵『歌枕名寄』(版本)をはじめとする貴重資料について精査する。そして、令和4年度調査済資料を合わせて、澤瀉文庫所蔵古典籍(和本)のデータベースを構築して、その資料的価値を明確にすることを目標とする。 3、その研究成果は、令和4年度と同じく附属図書館において展示会を実施して公開する。 4、令和5年12月に、本学研究開発推進センターにおいて科学研究費研究成果に関する公開シンポジウムを実施して、本年度の研究成果について発表報告する。 5、その研究成果は研究代表者、研究分担者の共同研究として論文にまとめ学術誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な原因は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う状況下にあって、他府県への調査出張に支障をきたすことが多く、したがって調査が近隣県にとどまったことに由来する。 令和5年5月には、新型コロナウイルスが第2類から第5類へと移行する予定であるため、本年度は関東方面への調査出張にも制限が解除されると思われるので、科研費支出も予定通り実施できる見込みである。
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