研究課題/領域番号 |
22K00335
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鹿島 美里 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (00609068)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 山東京伝 / 江戸座俳諧 / 大名俳諧 / 蘭学者 |
研究実績の概要 |
初年度の今年度は、山東京伝と係わりの深い江戸座俳諧宗匠らと大名子弟との俳諧交友関係の資料調査と解明を進めた。山東京伝のパトロンであった大名子弟は俳諧を江戸座俳諧宗匠に師事してその俳諧活動を行い、文化の後援者となっていた。京伝と係わりの深い江戸座俳諧宗匠として存義、晩得、春来などが挙げられる。これら江戸座俳諧宗匠は大名と密接な関係を築いていたことが注目され、大名子弟を後ろ楯として資金面での援助を受け、江戸座俳諧の拡大と俳壇の経営を行ったといえる。そのため江戸座俳諧宗匠と大名子弟との交友関係を彼らが編纂した俳書の調査を行った。このうち江戸座俳諧宗匠の亀成に注目し、亀成追善集『妙智力』から、亀成・菊堂ら江戸座俳諧宗匠と柳沢米翁・真田菊貫ら大名との俳諧交友での密接な繋がりを見出した。また亀成は存義門の俳諧宗匠であり、亀成が係わった俳書から存義門との関係が深いことが分かった。亀成は尼崎藩上屋敷や徳島藩蜂須賀家大名屋敷近くの南八丁堀に住み、俳諧宗匠として尼崎藩主松平亀文ら大名子弟をパトロンとしている実情が明らかとなった。さらに江戸戯作の原点の一つである見立絵本『百化鳥』の作者が亀成であったことから、『百化鳥』は京伝、喜三二、万象亭ほか多くの戯作者に影響を与え、江戸座俳諧と京伝の直接の繋がりが見いだすことができ、論文発表を予定している。 加えて、京伝の『通言総籬』に描かれた茶道具と松江藩主松平不昧、吉原見番大黒屋庄六の茶道具について「『通言総籬』に描かれた茶道具―松平不昧と大黒屋庄六所持の茶道具について」(『島根史学会会報』60号)の論文発表を行った。他にも、『新みなし栗』「唐がらし」歌仙分析」(『近世文芸研究と評論』103号)を担当した。享保期から天明期の連句作品を対象に注釈を行い、付合のあり方の考察を行った
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
山東京伝と係わりの深い大名子弟と江戸座俳諧宗匠の係わりを中心に資料調査を行った。京伝のパトロン松江藩主弟松平雪川、松前藩主弟松前文京や大和郡山藩主柳沢米翁ら江戸座俳諧活動を通じて京伝と係わりの深い大名俳人は江戸座俳諧宗匠の下で俳諧活動を行い、同じ連句会に参加することが多く見られた。特に大名子弟らと係わりの深い存義の俳書を中心に調査を進めた。彼ら大名子弟が活躍する宝暦から文政の間に京伝も多くの作品を発表しており、京伝の活躍と大名子弟らの後援者としての役割は、交友関係とともに金銭的な面でも作品に影響を与えていたとことが分かった。これらを論文として発表する予定である。さらに京伝の江戸座俳諧の俳諧交流によってもたらされた蘭学者や吉原者をはじめとする人脈・文化の繋がりに関しては、鈴木牧之記念館、横浜開港資料館、国立国会図書館の企画展示「知識を世界に求めて」から知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
二年目の次年度も京伝のパトロン松江藩主弟松平雪川、松前藩主弟松前文京や江戸座俳諧活動を通じて係わりの深い大名俳人の大和郡山藩主柳沢米翁、伊勢神戸藩主本多清秋、尼崎藩主松平亀文、松代藩主真田菊貫らの俳諧交友活動の解明を継続して行う。大名子弟が係わることによって勢力を拡大する江戸座俳諧の交友関係を明らかにする。彼ら大名子弟は江戸座俳諧宗匠の下で俳諧活動を行うため、これら大名子弟が入集する俳書からその交友関係を明らかにするとともに、江戸座俳諧を当時の俳壇の大きな枠組みの中で捉えていく。また、当時の江戸俳壇で隆盛していた蕉風俳諧に対して大名子弟をパトロンとする江戸座俳諧はどのような意義づけを持ったかを考察していく。そして蕉風中興運動や芭蕉が神格化されていく当時の俳壇の中で江戸座俳諧の俳壇における位置づけと江戸座俳諧宗匠が目指した俳諧の分析を進めていく。さらに、京伝の俳諧交友関係から生まれた蘭学者と繋がりについて、蘭学者大槻玄沢や市井の博物家木村蒹葭堂、京伝と同時代の蘭学者、戯作者でもあった森島中良についても大坂府立図書館などで調査を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
東北方面に調査にいく予定だったが、使用額の残高が少なかったため、次年度の調査とした。翌年度分の助成金と合わせて、調査に使用する予定である。
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