研究課題/領域番号 |
22K00351
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
島村 幸一 立正大学, 文学部, 教授 (70449312)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 旅歌 / 航海儀礼 / 旅グェーナ / だんじゅかりゆし / 踊合 / オナリ神 |
研究実績の概要 |
研究課題に取り組んだ初年度として、琉球の旅儀礼にかかわる書籍を広く収集した。また、沖縄県、鹿児島県へ赴き資料調査、収集を行う予定を立てていたが、特に本年度の前半期は新型コロナ感染拡大が収束していない状況を鑑み、資料調査、収集のための出張が充分にできなかった。それでも、沖縄県には3度、鹿児島県には1度の出張をして一定の調査と資料収集ができた。この出張については、主に申請者が所属する大学の個人研究費を当て、一部を科研費から支出した。 本年度の研究成果は、首里士族の旅儀礼の資料である『踊合-首里の旅うた』(見里春、一九七六年)に収録されている「旅グェーナ」と「だんじゅかりゆし」という二つの旅うたの口語訳をしその内容を分析して、二つのうたそれぞれの内容と歌の構成を明らかにして比較研究を行った。その成果は、立正大学人文科学研究所の紀要『立正大学人文学研究所年報』第60号(2023年3月)に「首里の旅歌-「旅グェーナ」と「だんじゅかりゆし」」として発表した。『踊合』に入る二つのうたの内容と構成を明らかにして分かったことは、二つの歌の内容は時系列的に展開しながら、それぞれが中心を置く歌の内容は独自であることが分かった。それは、一方が長詩形の叙事的な歌謡であり、もう一方が八八八六音で展開する短詩形の叙情歌であるという性格に起因すると考えられる。首里士族の旅儀礼、踊合は、この二つの歌を含む四つの歌が組み合わされて全体の旅歌が構成され、それが4度繰り返される。それぞれには、その謡い方、謡う際の所作(踊り)が異なる。それを整理して、『踊合』の中心を占める二つの歌の内容と構成を明らかに出来たことは、次年度の研究に取りかかれる研究の糸口が開かれたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染拡大により、特に年度の前半期は予定していた出張(資料収集)が予定通りできなかったが、関連する研究書の収集が一定程度できた。また、上記に記した『踊合-首里の旅うた』に収録されている二つの旅歌の内容の分析とそれを踏まえた二つの歌の構成を明かにできたことは、一定の成果だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、引き続き資料収集に努めて、琉球における航海儀礼の全容を明らかにする取り組みを進める。ひとつには、様々な性格のオモロが入っていると考えられる『おもろさうし』における旅歌(航海儀礼歌)的な性格がどれぐらいあるかを、オモロの分析によって明らかにしようと考える。また、『踊合』が謡われる場面を近世期の資料によって跡づける作業も行っていきたいと考えている。さらに『踊合』に入る「節グェーナ」「ヤラシー」についても考察していくつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は新型コロナ感染拡大が引き続きあり、当初予定していた資料調査、資料収集を目的とする沖縄県への出張が充分にできなかった。そのために、旅費を中心とする予算が使いきれなかった。今年度はコロナ感染の状況を見ながら、沖縄県への資料調査を積極的に行っていく予定である。
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