研究課題/領域番号 |
22K00359
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高橋 佑太 筑波大学, 芸術系, 准教授 (30803324)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 図譜 / 金石学 / 双鉤 / 模写 / 全形図 / 全套本 |
研究実績の概要 |
2023年度は、本研究の主要な観点の一つである、金石学に焦点をあてて考察を進めた。 金石学については、『石刻史料新編』収録の清代の金石学の書論に焦点をあて、当該期における図譜の展開について考察した。従来、稀覯本を収録するためか、黄易『小蓬ライ閣金石文字』(1800刊)や彼の訪碑活動を評価する論考が多いが、それに先行するチョ峻模『金石経眼録』(1736序)やチョ峻模・牛運震説『金石図』(1745刊)などの著録に石碑の形がうかがえる全形図や全套本が収録されていることから、乾隆期以降、金石学者の間で訪碑活動が流行し、過眼した石碑の全形図や全套本が「模写」という方法で記録されていたことを明らかにした。従来は文字で記録していた碑文を「図示」したという点に、当該期における新規性を見いだせることも指摘した。またこの方法については、宋代以降、伝統的に行われていた青銅器の全形図の収録という方法に示唆を得、援用したであろうことも指摘した。また文字の籠字(双鉤)という方法も、清代における新たな展開といえ、これについては、管見では『小蓬ライ閣金石文字』が初出といえ、道光年間以降、多くの著録がこの方法を採用していったこと、清末に向けて双鉤の技術も徐々に高くなっていったことも指摘した。 そのほか、中央と地方という観点から、地方志類の図譜をそなえた金石史に着目した結果、道光年間以降、特定の地域に特化したものが増加し、特に光緒年間以降、それが著しいこと、また雲南に関するものが多く見られることも指摘した。以上は、口頭発表「清代の金石学の著録に見られる図譜の展開―『石刻史料新編』収録の著録を中心に―」(書論書道史研究会第49回例会、2024)において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は図譜を備えた書論のリストアップ、2023年度は金石学に関する著録に着眼して研究を進めた。海外の図書館や研究機関等の調査が当初の計画よりも遅れているが、指南書に関する研究も論文としてまとめつつあるため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、金石学、書法指南という本研究の二つの柱のうちのどちらかに関する論考をまとめつつ、研究発表を行う予定である。また滞っている海外の図書館機関の調査についても進め、未発見の指南書、書論の発掘にも努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも海外出張に行くことができなかったため、次年度の費用として先送りする。研究の遂行上、必要不可欠な図書の購入、もしくは、海外の図書館等の調査費用として使用する計画である。
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