研究課題/領域番号 |
22K00364
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
秋吉 收 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (90275438)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 中国近代文学 / 日本近代文学 / 魯迅 / 版本 |
研究実績の概要 |
この年における本研究の実績としては、以下、1篇の学術論文執筆、並びに1回の国際学会にて、研究発表を行った。「魯迅『野草』の掲載誌『語絲』について―「愛知県立大学」所蔵“原本”の発見」(『周氏兄弟研究』第1号【特集「周氏兄弟と1920年代―『新青年』から『語絲』へ】」 2023年3月)では、従来当然の如く版本は基本的に一種類と見做されてきた近代の文芸雑誌について徹底的な調査を行った。まずは魯迅の代表作たる散文詩集『野草』が掲載された当時の先鋭的な文芸雑誌『語絲』を取り上げたが、その結果、原本に加えて合訂本や重版本等、人気に伴って何度も増し刷りされ、数多くの版種が存在することが明らかになった(現在も継続調査中)。これまで誰も注意を払うことなく使用してきたテキスト自体に多くの異同の存在が認められたことで、従来の多くの研究そのものが揺らぐ可能性があるだろう。また版本の形成過程についても、当時の言説から新たな事実を発見し報告した。特に、近代中国の著名かつ極めて重要な雑誌の原本が、本国たる中国では散逸して、日本の愛知県立大学(旧愛知県立女子専門学校)にそのほぼ全巻が残存されていることの発見は大きな驚きをもって学界に迎えられた。こうした版本調査を通して、そこに掲載された外国文学紹介・翻訳について引き続き調査を進めていく計画である。なお以上の内容につき「国際シンポジウム:周氏兄弟と1920年代―『新青年』から『語絲』へ」(於早稲田大学 2022年10月1日)にて「『語絲』版本攷」と題して研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も引き続きコロナ肺炎の影響下であったが、当該研究に関して、一定の成果を提出できたことは認められよう。もう一点の科研項目「18K00355 基盤研究(C) 翻訳、雑誌メディアから辿る、近代文学における中国と日本の接点の研究」(2018年度-)がコロナの影響で1年延長したため、この研究の最終年度と本研究の初年度が重複することとなり、内容の切り分け並びにそれぞれに成果を挙げることはやや困難を伴った。しかしそれぞれ共有できるテーマで研究を進めることで新たな視野を獲得することができ、本研究のスタートとしても望ましい形を取ることができた。 ただやはりコロナの影響は今年についても小さくなく、特に外国の大学や研究期間に赴くことは非常に難しく、研究資料収集の面で満足とは言い難い状況であった。しかし、2022年後半から23年に入っての状況は明らかに改善しており、国内の大学や研究機関は多く訪れることができた。今後は、中国その他の研究機関へ赴き、これまでの遅れを取り戻したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述「進捗状況」のように、昨年までコロナ肺炎の影響でスムーズに進めることのできなかった特に本研究と関係の深い中国・アジアの国々における「原資料」収集、研究調査をようやく本格的に再開できる見込みであるので、発表された日本文学翻訳・紹介、また出版刊行された日本文学翻訳単行本を徹底的に渉猟する作業を進める。 更に、それぞれの日本作家の翻訳、評論文章の著者について可能な限り探索し、日本語、日本文学との接点、また同時にその周辺(文学傾向、活動)の状況についても、詳細な調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:【現在までの進捗状況】にも記したように、本年度についてはコロナの影響で、もう一点の科研項目「18K00355」を1年延長することとなった。まずは最終年度の研究完成を目指したために、今年度の本研究はまさにスタートアップの時期となった。そして、国内・海外の研究機関を訪問して実地調査を行う予定の多くを中止せざるを得ない状況と相成った。次年度へと繰り越して有効的に使用する予定である。 使用計画:今年度の計画を後ろ倒しで次年度に繰り越すと共に、残りの研究期間にて、コロナ等社会情勢に影響されてできなかった部分も含めて、当該研究に活用していきたいと考えている。
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