研究課題/領域番号 |
22K00367
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
栗山 千香子 中央大学, 法学部, 教授 (40338645)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中国新時期文学 / 翻訳 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国新時期文学(文化大革命終結後の1970年代末から1980年代および1990年代の中国文学)の日本における翻訳の状況をあきらかにし、その文学的・文化的意義と今後のあるべき方向を示すことを目的としている。 外国文学の翻訳は、世界が共有する文化遺産である文学作品を母語で読むことを可能にするものであり、文学愛好者の趣向を満たすだけでなく、市民が外国の文化・社会・生活・経済等を知るための素材として、また、多様な分野の学術研究の資料として欠かせないものである。文学研究者・翻訳者には、そのような文化的役割を担っている外国文学の翻訳・出版の状況をあきらかにし、その成果と課題を検証し、今後の文学作品の翻訳・出版がどうあるべきか考える責任がある。本研究はそのような観点から、研究執行者の専門分野である中国現代文学領域の日本における翻訳について、検証と考察をおこなうものである。 具体的には、3年間の本研究では、1970年代末から1990年代までの「中国新時期文学」を対象とし、①邦訳作品目録を作成し、日本における翻訳状況をあきらかにする、②翻訳された作品の日本における評価(中国文学研究者の評価、翻訳者・出版社など送り手側の判断、他分野の研究者・読者など受け手側の需要等)について調査する、③翻訳された作品の中国における評価(文学史上の位置付け、研究者・文壇・読者・メディアの評価等)について調査する。さらに、②と③の共通点と相違点、およびその要因を分析することにより、日本における翻訳の傾向や特徴、その選択が読者や研究者や社会の要請に応えるものだったか、文学や学術や文化のために最適なものであったか、他に翻訳・出版されるべき作品はなかったか、今後の翻訳はどうあるべきか等について、考察と提言をおこなう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1年目にあたる2022(R4)年度は、中国新時期文学の邦訳作品目録を作成することに重点を置いた。 まず、これまでに日本で作成されている目録、すなわち①『中国新時期文学邦訳一覧(増補・改訂版)』(日本中国当代文学研究会、2007年12月)、②「作者別目録 第1号-第72号」(『季刊 中国現代小説』第72号、2005年7月)、③「本誌翻訳作品目録 1-16号」(『中国現代文学16』、2016年9月)について、可能な限り現物(図書・雑誌)にあたり、現物による確認が難しいものについては文献データベースを利用して、記述の修正と補充をおこなった。それにより、2007年6月までに発行された図書・雑誌に掲載された作品については、現段階で可能な限り正確なデータベース(A)を作成することができた。つぎに、目録③記載作品を含む2007年7月以降発行の図書・雑誌に掲載された作品について調査をすすめ、初歩的なデータベース(B)を作成した。 邦訳作品目録については、データベース(B)に収録すべき作品の掲載図書・雑誌が広範囲にわたるため調査に予想以上の時間を要し、初歩的なものを作成するにとどまったが、2年目以降、さらに精度の高いものにしていく。また、1年目は本研究の基礎となる邦訳作品目録の作成に重点を置いたため、翻訳作品が収録されている図書・雑誌の収集がほとんどできなかったが、2年目以降、積極的に収集していく。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる2023(R5)年度は、(1)邦訳作品目録の作成(修正と補充)を継続しておこない、とくに、2007年7月以降発行の図書・雑誌に掲載された邦訳作品について重点的に調査をすすめ、研究1年目に作成した初歩的なデータベース(B)の修正と補充をおこない、より網羅的で精度の高いデータベースを作成する。(2)中国新時期文学の邦訳作品について、図書は可能な限り収集し、雑誌については重要な作品が掲載されたものを優先的に収集する、(3)日本および中国の文学史、研究論文、書評、翻訳者の解説等を調査・収集・整理し、翻訳された作品に関する日本と中国の評価、その共通点と相違点、およびその要因を検証する。 研究期間最終年にあたる2024(R6)年度は、1年目と2年目に作成した邦訳作品目録の更新・整理、翻訳作品を収録する図書・雑誌の収集、日本と中国の関連文献の調査・収集と分析を継続するほか、日本と中国の研究者への聞き取りと情報収集、情報交換をおこない、多層的・多元的な視点から研究を総括する。また、研究成果を発信するための準備を進める。 なお、研究2年目と3年目には、中国にて資料の調査・収集、研究者との意見交換をおこなうことを計画しているが、新型コロナの影響等により中国出張に慎重にならざるをえない状況が続いているため、オンライン会議等を利用することも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、邦訳作品目録の作成のほか、邦訳作品が収録された図書・雑誌の収集もおこなう予定だったが、「進捗状況」に記したように、まずは邦訳作品目録作成に注力し、作品が収録された図書・雑誌の収集はほとんどおこなわなかったため、次年度使用が生じた。 2023(R5)年度には図書・雑誌の収集を積極的におこなうほか、関連の資料も収集する予定であり、それらの費用として使用する。
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