| 研究課題/領域番号 |
22K00379
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| 研究機関 | 奈良女子大学 |
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研究代表者 |
中川 千帆 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (70452026)
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| 研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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| キーワード | 家 / 看護師 / 国家 / 軍隊的家庭性・家庭的軍隊性 |
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| 研究実績の概要 |
20世紀半ばの犯罪小説において、女性の居場所とされる家庭空間がどのように犯罪小説において描かれているか、また女性の職業とその家庭空間がどのように関わるかについての研究を行い、特に看護師という職業を持つ女性探偵について焦点を当てた。研究成果は、国際学会において、また国内の学会において発表した。
2022年度前半は、まず前回の科研費課題『家と自己』との延長戦上にある、職業を持たない独身女性と家庭、また結婚した女性と家庭の関係を浮かび上がらせるミス・マープルシリーズの作品を取り上げて研究を行った。家庭のイデオロギー的側面があるべき女性像と深く関わっていることがどのように家という建築構造物の描写に反映されているかを指摘しつつ、特に異性愛規範との関わりについて議論した。
後半は看護師探偵シリーズに注目し、Mignon G. EberhartやMary Roberts Rinehartの作り出したSarah KeateとHilda Adamsのシリーズについて研究を行った。1900年のGrant AllenのHilda Wadeが看護師探偵像の最初といえることを発見し、1914年から始まったHilda Adamsシリーズと1929年から始まったSarah Keateシリーズとの相違点などを明らかにした。同時にSarah KeateシリーズとHilda Adamsシリーズの中から特に第二次世界大戦中を舞台とする作品に焦点を当て、看護師と戦争の関係を看護師の職業成立の文脈の中から歴史的に考察するとともに、軍隊的家庭性・家庭的軍隊性の意味について議論を行った。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前回の課題から新しい課題へスムーズに移行することができている。2022年度は独身女性・結婚した女性と家・家庭の関係から、個人の家庭において看護師として働く女性と家・家庭の関係へ、とテーマ的には連続性を保ちつつ、女性の社会的位置の違いによる差異を考察した。犯罪小説の場合、非常に作品数の多いシリーズもよく見られるが、看護師探偵の２シリーズは比較的数が少なく（5作と7作）、2022年度中にすべてを視野に入れて研究することができた。
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| 今後の研究の推進方策 |
2023年度に予定しているのは、犯罪小説における家庭教師（governess）と家庭の関係に焦点を置いた研究である。看護師探偵シリーズと違って、家庭教師探偵シリーズは現在分かっている限り存在せず、かつて家庭教師であった探偵Miss Silverのシリーズがあるのみである。Miss Silverシリーズは32作あり、すべてを2023年度中に研究対象とすることはできないと思われるため、まず現役の家庭教師が登場する作品に注目して、研究を行っていく予定である。一方で、家庭教師が主人公として登場するスリラー、またはロマンティックミステリと呼ばれるサブジャンルの作品は数多くあり、それらとの比較対照のなかから、家庭教師が主人公や探偵の役割を果たす場合、また犯罪者や悪役となる場合などの描かれ方を整理して、家庭教師の家庭空間との関係とそのイデオロギーの問題点を議論していく予定である。その研究については、International Crime Fiction Associationにおいての発表を2023年度も予定している。
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