研究課題/領域番号 |
22K00381
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
木原 誠 佐賀大学, 教育学部, 教授 (00295031)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オクシデント / ノルウェー・バイキング / フラクタル / 大西洋文化圏文学 / 水辺のネットワーク / マニエリスム / 聖コロンバ |
研究実績の概要 |
「研究の概要」:極西アイルランドの精神の地下水脈には一四○○年にも亘り静かに脈打つ一 つの思考がある。水辺の思考。その起源は六世半、全土の水 辺で一斉に開花し た各修道院が水路のネットワークによって一つに結ばれ発生をみた学術都市群共同体にある。 その特徴は大陸ヨーロッパの 基盤、陸路の思考=直線・合理的なユークリッド原理に反定立する 水路の思考=円環・非合理的なフラクタル原理にある―大西洋沿岸の海岸線 のように、蛇行を繰り返す思考の流れが内部に無数の渦巻きを形作りながら一本の線で結ばれる。『ケル ズの書』に表れる芸術様式、大陸の マニエリスムとも一線を画す極西のケルト固有の水辺のマニエリスムの誕生。その思考様式はW. B.イェイツにより見出され、文芸復興運動の基軸に 据えられ復権をみた。その後、彼の影響を受けた現代アイルランド文学を代表する二人の作家、すなわち劇作家J.M.シングと小説家ジェイムズ・ジョイスへと継承されることでアイル ランド文学の新潮流を形成していくことになる。 「研究の目的」;本研究の目的は以上の命題を検証していくことである。さらに以下の点を捕捉しておく。 文学研究における本研究は従来のアイルランド海航路による英・愛蘭間二国間文化交流 に偏重される<英文学の中のアイルランド文学研究>の 死角、<大西洋文化圏の中のアイルラン ド>という新しい文学研究の地平を切り拓いていくことにある。 「研究実施計画」:以上の研究目的を既に提出した「研究実施計画」に従って、三年間で遂行したいく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の目標は「研究業績の概要」に示した研究課題のうち、一年分を達成することであった。その際、先行研究を含めた参考文献の読み込みとフィールドワーク(現地調査)を行うことを予定していた。ただし、現地調査はいまだコロナ禍にあるため、本年度は現地調査を断念し、文献の読み込みを中心に行った。その過程で、本研究課題を進めるための鍵となる重要な歴史的事象を収めた数十冊に及ぶ先行研究及び資料を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は本研究課題を進める(検証していく)際の重要な鍵を手に入れることができ、その一部を既に公に公開している。本年度の目標は、得られた見地を集約し、できれば本年度中に一冊の著書に纏め、公に出版することである。現在の大方の見積では、全体で400字×2000枚程度のかなりの分量になる予定である。本研究の最終目標が「概要」に記した命題を証明し、それを一冊の著書にまとめ、刊行することであったので、仮にこのことが達成できれば、一年前倒しで、本研究の目標は達成できたことになるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において、海外出張を控えたため、予算が残った。
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