研究課題/領域番号 |
22K00392
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
ウェルズ 恵子 立命館大学, 文学部, 教授 (30206627)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 文化変容 / 歌詞 / ミュージカル / ラブソング / アメリカ / 音楽文化 / ヴァナキュラー文化 / アメリカ文学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、19世紀末から20世紀中葉までのラブソングの歌詞と作詞家および購買層に注目しつつ、(1)世俗歌としてのラブソングの歴史、(2)アメリカ社会の動向とラブソングの流行、(3)作詞家たちの経験と歌の特質、(4)ラブソングの流通におけるアフリカ系アメリカ人の立場と影響力、について明らかにすることである。22年度は、初期のブロードウェイ・ミュージカルから生まれて現在でも知られているラブソングとその作詞者を詳しく見て、以下のような知見を得た。 初期ブロードウェイ・ミュージカルのラブソングが、「あなたと私」の世界を好んで描き、それによって世界中にファンを得た秘密は、日常的なロマンスを夢見ることや単純極まりない英語の表現、装飾を避け直感的な歌詞を用いたところにある。それは、ニューヨークを初めとする欧米の近代都市に生活する多様な人種や宗教的・文化的背景の人々に、できるだけ広く受け入れられつつ「低級文化」とおとしめられない工夫を凝らした、新しい時代のテーマと歌詞だった。1920年代や30年代に作られたこれらの歌は、20世紀から21世紀にかけて、レコード、ラジオ、映画、テレビ、インターネットと、テクノロジーが発展する中で、歌手の個性や映像の場面と強く結びついて再生されるようになっている。20世紀初頭のアメリカで作られたラブソングのうち、歌手の声の個性や歌の解釈が篩にかけられ、新しいシーンに適応可能な人間の本質に根ざしたエッセンスを含んだ歌や歌唱は、ポピュラーソングのスタンダードナンバーとして今も生きている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ進捗に問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
23年度は60年代に焦点を当て、1)1960年代以降の黒人アーチストによる新解釈やリメイク、2)プロテストソングの興隆と新たなラブソングの出現 、3)フォークバラッドへの回帰について研究を進める。具体的な計画としては、 1)9月までに 60年代のラブソング とプロテストソングの関係について論文を執筆、2) 10月にスロベニアで中央ローロッパ系の love ballads 資料を収集する。(中央ヨーロッパから東ヨーロッパにかけての love ballads とアメリカのpopular ballads の関連は少なからず指摘が可能と思われる。)
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために海外調査ができず予算が使いきれなかった。次年度には国際学会での研究発表を計画しており、合わせて調査旅費などによって予算の執行が進む予定である。
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