研究課題/領域番号 |
22K00410
|
研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
伊藤 淑子 大正大学, 文学部, 教授 (50223201)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | Margaret Fuller / フェミニズム / 19世紀女性作家 / Ellen Craft / Lydia Maria Child / インターセクショナリティ / 女性の権利 |
研究実績の概要 |
2023年度はメーガン・マーシャルによるマーガレット・フラーの伝記の翻訳を『マーガレット・フラー:新しい女性の生き方』と題して出版した。フラーや関連する人たちが実際に書き残した著述や手紙、日記をもとに、多彩な引用をつないで、フラーの人生を再構築するマーシャルの伝記の書き方は、膨大な資料に基づくものであり、この翻訳をとおして詳細な資料に触れることにもなった。 この出版にあわせて、原著者の来日と講演会の開催を計画していたものの、原著者の事情によって延期となったのは残念であったが、マーガレット・フラーへの関心は日本の研究者たちのあいだで高まりつつあり、新たに数名の研究者たちとマーガレット・フラーに関する研究論文集の出版の計画が起こっていることは、今後の発展的な可能性である。 マーガレット・フラーに加え、19世紀の女性の権利の要求が女性たち自身によっていかに行われたかを検証するために、リディア・マライア・チャイルドの著書の読みこんだ。さらにその周辺のまだあまり研究の進んでいないコスタンス・ウールソンやエリザベス・スタダードの作品を考察した。19世紀の女性たちの個々の言説を歴史的もしくは社会的な文脈において接合し、現代の視点を取り入れながら、新たな意義を見出していくという本研究の基礎固めに努めた。 2023年度は2022年度につづいて、本研究の基礎的な調査と文献などの資料整理を行ったが、2024年度以降、積極的に成果の発信を行いながら、研究を進めたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による困難も解消していくなかで、想定外であったのは、遠距離介護が必要になったことであった。研究になかなか集中できない状況が続いたが、その後、生活も平常な状態に戻り、本来の研究計画に追いつきたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度はアメリカの学会(ALA)において、“Margaret Fuller as Educator: a timeless educational perspective of her books and articles”と題する発表を行う。また、日本ナサニエル・ホーソーン協会の大会でシンポジウムをコーディネートし、司会と講師を務める。2022年度および2023年度の成果を発信することに努めるとともに、2025年度から2026年度にかけて、原稿の執筆に専念し、本研究の最終的な目的である本の出版を目指し、19世紀アメリカにおける女性の権利の獲得によって生まれた言説が現代の状況にいかなる意味を持ちつづけているかを論じたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2023年度3月に計画していたメーガン・マーシャルの来日と講演会が講師の事情で延期となり、準備していた謝金や滞在費の費用が残った。講演会の開催の具体的な目途はまだたっていないので、研究費は文献・資料収集や、アメリカでの研究調査、学会参加にあて、より充実した研究活動を実施していきたい。
|