研究課題/領域番号 |
22K00416
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
吉田 恭子 立命館大学, 文学部, 教授 (90338244)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / David Foster Wallace / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
本研究はDavid Foster Wallace (1962~2008)の文学的遺産、とりわけ彼の代表作である百科全書的な第2長編小説Infinite Jest (1996) を、今日のアメリカ文学・文学史研究再編に鑑みて再評価することを目的とする。2000年代以降アメリカ文学は今までにもまして多様化し、ウォレスのような白人男性による長大かつ難解な小説への過大評価を修正する論調が広がってきた。本研究は90年代から今日へのメンタルヘルスに対する社会意識の変化を参照に、Infinite Jestの再評価を試みる。研究初年次の本年度は、作品評価を進めるにあたって、「ことさらに強調された媒介性」と、メンタルヘルスの扱いを手がかりとする。月一度の読書会を対面もしくはzoom上で行い、長編Infinite Jestのほぼ半分まで読み進んだ。読書会には関西・中部地区の若手研究者が参加し、Infinite Jestの主要テーマの特定、くりかえしあらわれるモチーフの指摘、またテクスト内で言及される文学作品・文化現象、比較対象となる同時代テクスト、先行テクストが議論された。とりわけ議論の的となったのは、90年代の文化状況と文学トレンド、そして作品内の細かなジョークや風刺的言及、そして自我の檻に閉じ込められた登場人物たちの当事者としての苦痛である。90年代の文化状況については、より理解を深めるために音楽評論家である中田勝猛氏を招聘し、Wallaceの文学と90年代の音楽の関係についてゲスト講義の機会を設けた。また、作品・作者に対する批判的見方としては女性、クイアな性をめぐるジェンダー表象の問題がくりかえし浮上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
月一回のペースで読書会を開催することができている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も今年度と同様のペースで読書会を続行する。Infinite Jest読了の時点で、海外から専門家を招聘し、さらに研究を進展させる予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
対面による読書会が当初の予定より少なかったため、出張費が少額となった。
一通りテクストの検討が終わった時点で海外からの講演者招聘を計画する。
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