研究課題/領域番号 |
22K00422
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐野 隆弥 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90196296)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 17世紀初頭のイングランド史劇 / 王朝交替期 / 諷刺文化 / ジャコビアン・トラジディ / プロテスタント / カトリック / The Revenger's Tragedy / The Maid's Tragedy |
研究実績の概要 |
令和4年度においては、ジェイムズ朝期における宗教・政治関係の研究書、および諷刺文化とジェイムズ朝悲劇を中心とする演劇興行に関する文献・資料を収集した。その上で、諷刺文化とジェイムズ朝悲劇との関係性解明のプロジェクトの第1弾として、17世紀初頭のイングランド史劇を対象に、諷刺文化とジェイムズ朝悲劇から補助線を引くことで検証を試み、その成果を研究会で発表した。(「17世紀初頭のイングランド史劇を再考するー初期ジャコビアン・トラジディと諷刺文化を補助線として-」、「エリザベス朝英国史劇における民衆のイングランド王国表象」第3回研究会、2022年8月10日、於秋田市にぎわい交流館AU。) 今回分析の対象とした17世紀初頭のイングランド史劇、王朝交替期の諷刺文化、そして初期のジャコビアン・トラジディの3者は、ほぼ同時期の現象であり、17世紀初頭のイングランド史劇が、特定の偏向した歴史観・歴史記述を採用していることの理由を、諷刺文化と初期のジャコビアン・トラジディに現れる政治・宗教表象の視点から解明を試みたものである。 具体的には、初期のジャコビアン・トラジディとして、Thomas MiddletonのThe Revenger's TragedyとBeaumont & FletcherのThe Maid's Tragedyの2作品を分析対象として取り上げ、前者の悲劇においては、同時代への言及ー火薬陰謀事件や第1次エンクロージャーーが顕著に観察される一方、後者の悲劇にあっては、国王の生命や大権と個人を中心とする価値観がせめぎ合う構造ゆえ、作品のイデオロギーが見えづらい状況を指摘した。結論として、17世紀初頭のイングランド史劇の画一的歴史観とは異なる価値体系が、演劇に持ち込まれていることを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、エリザベス朝王朝交替期において顕著となった諷刺文化や諷刺劇が、後続の演劇興行ー取り分け、ジャコビアン・トラジディーに及ぼした作用を、実証的に検証することである。特に、令和4年度の目的は、ジャコビアン・トラジディの嚆矢とされるBeaumont & FletcherのThe Maid's Tragedyを分析することであった。この点に関し、研究発表を行うことができた。よって、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的は、エリザベス朝王朝交替期において顕著となった諷刺文化や諷刺劇が、後続の演劇興行ー取り分け、ジャコビアン・トラジディーに及ぼした作用を、実証的に検証することである。令和5年度の目的は、ジャコビアン・トラジディの中期を代表する作品であるJohn WebsterのThe Duchess of Malfiを分析することである。令和4年度の研究課題であったBeaumont & Fletcherの作品分析で得られた知見を活かしつつ、ジャコビアン・トラジディ生成の実態解明を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度においては、依然新型コロナウイルス感染症の影響で、国内における共同研究や、オンサイトでの各種学会・研究会の開催・参加に支障が生じ、旅費関係にかなりの残余額が生じた。 令和5年度においては、これらの残余額と令和5年度配当の研究費を活用しながら「今後の研究の推進方策」に記述した研究課題を遂行する。各種資料・研究書の収集、それらの利用による研究論文の執筆と研究発表を計画している。
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