研究課題/領域番号 |
22K00423
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大藪 加奈 金沢大学, 外国語教育系, 教授 (30283146)
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研究分担者 |
小笠原 知子 金沢大学, GS教育系, 助教 (20772586)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | YA文学 / 児童文学 / 摂食障害 / ジェンダー / Narrative-based medicine |
研究実績の概要 |
本研究では、現代の若者のメンタルヘルス問題がヤングアダルト(13歳~18歳)テキストでどのように言語化されているか分析する。主要対象テキストは、2010年以降に英語圏で出版されたヤングアダルト(YA)文学のうち、心の問題(特に他者の視線にまつわる不安と摂食障害)を抱える主人公が描かれるリアリズム小説、患者や元患者が執筆した当事者自伝や物語、そしてそれらのテキストについてインターネットに公表された読者の書評やコメントである。 この研究では主に社会構築主義に基づくnarrative-based medicineの手法を用い、テキスト内の「病い」の描写と、当事者をとりまく社会や人間関係の描写を分析する。また、それらのテキストがどのように読者に受容されているか明らかにする。研究期間中に、「病いの語り」にみられる病理の内在化・外在化に焦点をあててメンタルヘルス表象を読み解き、YAテキストがInclusive Literature として機能している形を明らかにする。 2022年度は、先行研究調査および対象テキストの特定を行った。具体的には、摂食障害に関するYA文学研究をリサーチし、「病い」の語りに関する先行研究の調査と整理を行った。また、ジェンダー理論の視点から摂食障害文学がどのように分析されているか、の先行研究調査に取り掛かった。さらに、Wintergils(2009)について2021年度の国際児童文学学会世界大会での発表内容をまとめ、日本イギリス児童文学会でA Thousand Steps into the Night(2022)の日本描写についてジェンダー的視点からの考察を加えた発表をした。(以上研究代表者)摂食障害のNarrative-based medicineに関する先行研究の調査を行った。(分担者)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
勤務校の管理運営業務や複数の教育改革関係業務のため、研究時間にさける時間が大幅に減少し、研究エフォートを下げざるを得なかった。そのため、摂食障害文学作品の精神分析的観点からの先行研究調査に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度もこれまでの学会発表成果を論文にまとめる計画である。8月には国際児童文学学会(アメリカ)での発表が予定されている。研究計画に遅れの出ている精神分析的観点からの摂食障害文学研究専攻調査を進め、Wintergirls研究については、Narrative-based medicineの手法に関する論文での学術誌採択を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に関しては、図書が高価であるためなるべくオンラインや複写サービスを使用し、たところ、文献費が少なくなった。また、研究時間の減少により、研究活動が縮小し、予算執行も少なかった。旅費については、想定よりも近い都市での開催となったので、執行額が少なかった。2023年度については、燃料費の高騰や欧米との金利差、インフレ等により、海外出張費が増える事が想定されるので、残額をそれに充てる計画である。
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