研究実績の概要 |
2023年度も文献の読解を中心に行った。特にPhilanthropy in British and American Fiction: Dickens, Hawthorne, Eliot and Howells(2007)のような、2000年代以降に出版された文献を読み、申請者が元々専門とする20世紀以前の英文学作品における慈善の描かれ方を把握することに注力した。
研究代表者が主宰する勉強会においては、2023年よりE. M. Forster, Marianne Thornton(1956)を継続して読んでいる。Forsterの小説作品においては慈善活動に対し批判的な姿勢がうかがえるが、大叔母の伝記である本作においては肯定的な姿勢も見られる。執筆年代や作品ジャンルの違いによってこのような差異が見られることが分かり、この点は引き続き掘り下げて考えたい。Forsterに関しては、20世紀初頭のイギリスにおける慈善や貧困についての考察を含むHowards End(1910)の訳出も続けており2024年夏~秋に出版予定。
また、研究開始当初はイギリス文学が慈善に対し批判的な目を向け始めるのは19世紀後半だと考えていたが、それよりも前に書かれたJane Austen, Emma(1815)等の作品を改めて精読してみると、主人公が慈善活動に取り組む様子を描く筆致にはすでに皮肉な眼差しが感じられ、研究開始時点での見解に修正を加える必要があることも分かった。
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