研究課題/領域番号 |
22K00449
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松田 浩則 神戸大学, 人文学研究科, 名誉教授 (00219445)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ポール・ヴァレリー / カトリーヌ・ポッジ / ルネ・ヴォーティエ / エロス / 書簡 |
研究実績の概要 |
ヴァレリーが1925年から1938年までの期間に彫刻家のルネ・ヴォーティエ (Renee Vautier, 1898-1991) に宛てた160通の未公刊の書簡集がパリ=ソルボンヌ大学教授ミシェル・ジャルティの手で出版された(Lettres a Neere (1925-1938), La Cooperative, 2017)。本研究はその書簡集を手掛かりに、1930年代のヴァレリーのエロスと知性の相克のありようを分析しようとするものである。ルネ・ヴォーティエといえば、ヴァレリーの胸像を作ったばかりでなく、対話作品『固定観念』の中心概念となっている「唯一のオブジェ」や「錯綜体」などの発想源にいる人物として、従来よりその名前は知られていたが、彼女に関する一次資料が公表されてこなかったために、断片的な知識にとどまっていた。そうした意味で、この書簡集は、とりわけヴァレリーの感情史の中にあって、カトリーヌ・ポッジとジャン・ヴォワリエことジャンヌ・ロヴィトンとの間にあった大きなミッシング・リンクともいうべき貴重な資料である。その意味で、個々の手紙の分析をおこなうことによって、ヴァレリーにおける重要な概念の数々がどのように生成されていったのかを明らかにすることができた。とりわけ、ヴァレリーとヴォーティエがおのれの作品を通して、互いの似姿を作る行為がピグマリオンの行為に接近することを指摘した。この研究成果は、雑誌『Stella』(41号、九州大学フランス語フランス文学研究会、2022年12月)に発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍にあって、予定していたフランス国立図書館での資料収集はできなかったが、すでに収集済みの資料を読み深めることで、3万字ほどの論文を執筆し、発表することもできたので、研究は順調に進んでいるものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きルネ―ヴォーティエ二宛てたヴァレリーの手紙を研究することで、1930年代のヴァレリーにおける知性とエロスの相克の劇を明らかにする計画である。その一方で、1920年から28年にかけて親交のあったカトリーヌ・ポッジとの往復書簡などの資料を研究して、ヴァレリーにおける最大の謎である「ジェノヴァの夜」の危機の真相を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成金に残が出た理由は、ひとえにコロナ禍により、予定していたフランス国立図書館での資料収集ができなかったことによる。現在衛生状況も改善されてきているので、早急の執行を予定している。
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