研究課題/領域番号 |
22K00450
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
野呂 康 岡山大学, 教育推進機構, 准教授 (70468817)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | パスカル / プロヴァンシアル書簡 / 論争 / ジャンセニスム / 作家像 |
研究実績の概要 |
本研究の期間は三年間が予定されており、本年度はその二年目にあたる。申請時に論争、共同制作、文書の働きかけの三つの視点を導入し、研究目的を設定した。 初年度には共同制作の実態に迫るべく、作家と作品という伝統的な文学研究の視点と比較し検討した。その成果の一端は二つの学会で発表している。「パスカルと『プロヴァンシアル書簡』(2) 語り手としての単一の「私」」(日本フランス語フランス文学会・中国・四国支部『フランス文学』No.34、2023、 p. 15-29:「『プロヴァンシアル書簡』の作者は誰か? パスカルと『プロヴァンシアル書簡』」(日本フランス語フランス文学会編『フランス語フランス文学研究』、第123号、2023、55-70. 本年度は主に論争研究の視点から、書籍としての『プロヴァンシアル書簡』の刊行に至る前の段階である小冊子の印刷について、当時の出版状況との関連で考察した。これについては、フランスで開催された国際シンポジウムで発表している。 Est-ce que les libraires-imprimeurs < jansenistes > existent ?(インターネット上での公開が決定している) 本年度は後期に長期の研究出張が認められたため、『プロヴァンシアル書簡』と反イエズス会文書との接点に位置付けられる『パリ主任司祭文書』の全体をフランス国立図書館で入手することができた。また本年度の研究成果に基づき、パリ-ナンテール大学で四回の招待講演を行った。さらにニューヨークにおいて、同時代の論争文書であるマザリナード文書について調査をすることができた。 最後に、本研究企画の開始に伴い組織した日仏共同の研究会をzoomを用いて継続している。本年度は日本人4名フランス人3名が発表し、貴重な成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の開始時に組織した日本とフランスの研究者の研究会をzoomを用いて継続し、意見交換に努めている。本年度は日本人4名フランス人3名が発表し、定期的に貴重な成果を得ることができた。我が国における研究成果の発信及び、フランス本国での最新の研究の摂取と共有の点から、来年度もまた継続したい。 研究実績に記した本研究計画の第二段階まではほぼ終了しており、最終年度に当たる来年度には、主に『プロヴァンシアル書簡』の反イエズス会文書としての性質を探る予定である。これにより、申請時に提示した三つの視点と研究目的を完遂できよう。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績に記した本研究計画の第二段階まではほぼ終了しており、今後は主に『プロヴァンシアル書簡』の反イエズス会文書としての性質を探る予定である。 本研究企画の開始時に組織した日本とフランスの研究者の研究会をzoomを用いて継続している。研究会はすでに来年度も定期的な開催が予定されている。 最終年度に当たる来年度は、これまでの個人の研究及び研究会の総括として、秋に複数のフランス人研究者を招聘し、国際シンポジウムを開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の学会及び研究会への出席については、ほぼ予定通り実施された。但し後期のみ在外研究が許可されたため、海外での資料調査と研究交流の機会を増やすことができた。予定外であった分については、旅費のみの申請でほぼ予算内に収めることができた。他方研究開始当初より最終年度の国際シンポジウムの開催は予定しており、招聘者も内定しているが、昨今の為替市場の状況に鑑みて、当初予定した開催費用を上回る可能性が出てきた。そこで一部を次年度に繰り越すことで開催を確実としたいと考えた。具体的には、今年度予定していた研究会への国外研究者の招聘は見合わせ、国際シンポジウムへの3名の国外研究者の招聘を実現する予定である。また、国際シンポジウムに必要とされる費用を確保しつつ、やはり当初より予定されていた資料の調査と保存を目的とした機器を購入する必要がある。
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