研究課題/領域番号 |
22K00453
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小松原 由理 上智大学, 文学部, 教授 (70521904)
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研究分担者 |
西岡 あかね (秋元あかね) 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (30552335)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | キャバレー / ジェンダー / 新しい女 / モデルネ / 女性芸術家 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究初年度における文献調査やドイツ語圏初期カバレット文化に関わった具体的な人物たちのネットワークなどを調査する活動を経て、そこから得られた新たな知見をもとに、学会発表を行い、いわば最終的な成果発表へ向けた「中間報告」を行う一年となった。特に本年度の重点的なテーマとなったのは初期カバレットにおけるジェンダー像についてである。この点、研究代表者は日本比較文学会の全国大会において、ドイツ語圏における最初期のカバレットである「ユーバーブレットル」誕生に関わったエルンスト・フォン・ヴォルツォーゲンの女性像を分析する発表を行った。この分析において使用した資料は、研究初年度に精読した、キャバレー開店直前に出版されたヴォルツォーゲンの鍵小説『第三の性』と、「ユーバーブレットル」で実際に披露されたカバレットソングのテクストである。パリの「シャノワール」をはじめとしたフランス発のキャバレー文化の模倣として出発したドイツ語圏カバレットでも、逸脱した女のイメージを歌い上げるジャンル「娼婦の歌」Dirnensongは好んで継承されたが、とりわけ「ユーバーブレットル」では、スポーツ的な運動性や経済的自立性といった。現実社会に当時台頭し始めた「新しい女」のイメージが巧みに紛れ込んでいる点が注目される。また、研究分担者はエクリチュールフェミニンの作家アンナ・ラインスベルクの著作『それぞれの闘い』の翻訳出版を通して、日本ではほぼ未紹介である、エミー・ヘニングスやエルゼ・リューテルといった、共にドイツ語圏のカバレットに関わった女性芸術家の存在とその活動を紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者への不測の業務の追加により、2023年度に予定していたキャバレー研究者による大規模なシンポジウムなどの計画が実行できなかった。この点は、2024年度に延期することを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
・2023年度に実施を計画していたキャバレー研究の比較研究を展開すべく、シンポジウムを企画すること。 ・芸術キャバレーにおけるジェンダーについて、個々の女性芸術家の関与の実態を明らかにするべく、具体的な調査研究を進めること。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に、研究代表者の予期せぬ社会的業務の受け入れに寄り、渡航費の費用及びシンポジウム用の人件費用に大幅な残額が生じた。今年度は、延期されたシンポジウムを新たに計画し、より広く意見交換をしながら、研究の成果発表へと結び付けたい。
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