研究課題/領域番号 |
22K00457
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福田 育弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70238476)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 美食 / ガストロノミー / テロワール / 共食 / コンヴィヴィアリテ |
研究実績の概要 |
現場での3週間にわたる幅広いフィールドワークからも、テーマであるテロワールとコンヴィヴィアリテの密接な関係が次第に明確になってきた。 それを文学作品をとおして明らかにする社会人講座(早稲田大学エクステンションセンター)「フランス料理の世界を読む」(全10回)を2024年4月から行う予定である。この一連の講義の準備をとおして、19世紀からフランスのガストロノミーの発展において、文学作品がはたした役割が明らかにすることで、テロワールとコンヴィヴィアリテの関係性がより深く分析できることと思う。 この講座の内容は、すでに教育評論社から書籍として刊行されることが決まっており(来春刊行予定)、研究内容は広く社会に還元されることになる。 具体的な実績としては、2024年3月に刊行された早稲田大学教育・総合学術院の紀要『学術研究』第72号に発表した「美食ないしガストロノミーの社会的編成:その社会的編成」があげられる。ここでは、ドイツの歴史社会学者ノルベルト・エリアスの「文明化の過程」という視点を、フランスのガストロノミーと日本の美食の歴史的編成過程に適用して、それらの飲食美学と飲食実践が、それぞれ内部に一種の抑制装置を備えていることを明らかにした。 それは、フランスの場合、テロワールとコンヴィヴィアリテであり、日本の場合、わび・さびの美学および武士の禁欲主義である。本研究に関して、この論攷で明らかになった最大の事実は、テロワールが自然性にかかわるようにみえながら、フランスの各地方が平等にフランスのガストロノミーを構成するための概念ないし表象であるという点である。つまり、テロワールは社会性におおきくかかわる概念ないし表象であるということである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
テロワールが自然性をふまえつつ、社会性にかかわることが明らかになったことで、研究の方向が一気に開け、それをフランスの文学作品で確認・検証する発想が生まれた点が大きい。 この検証作業の成果のひつつが早稲田大学教育・総合学術院の紀要『学術研究』72号に発表した「美食ないしガストロノミーの社会的編成:その社会的役割を考える」であり、、さらに早稲田大学エクステンションセンターの講座(全10)の準備をしたこともしたことも大きい。
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今後の研究の推進方策 |
フランスの文学作品でのテロワールとコンヴィヴィアリテの相互関係の構築と変容過程を飲食文化にそくして分析・考察する。 可能なら、それをさらにひろく表象作品全般までひろげること。それが課題である。 もうひとつは、テロワールの代表的産物でワインについても、文学作品および文学的言説をを広くかつ緻密に分析ることで、テロワールとコンヴィヴィアリテの相互関係の構築と強化におおきくかかわったことを考察したい
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