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2023 年度 実施状況報告書

W・ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」補遺の綜合的解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K00462
研究機関東京大学

研究代表者

竹峰 義和  東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20551609)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードベンヤミン / 複製技術
研究実績の概要

2023年度は、1. ベンヤミンとモスクワの亡命雑誌『インターナツィオナーレ・リテラトゥーア』および『ダス・ヴォルト』との関係の検証、2.ベンヤミンのセルゲイ・トレチヤコフ受容を手掛かりとした複製技術論文における知識人の形象の解明という二つの作業を軸に研究を進めた。1.の結果、ベンヤミンの複製技術論文のうちに、1935年夏のコミンテルン第七回世界大会で公式に採択されることになる「反ファシズム統一戦線・人民戦線路線」にたいする批判的応答と、人民戦線をめぐるソ連・フランスの言説状況への戦略的介入という意図が込められていたことが明らかとなった。また、2.の結果、「生産者としての作者」で論及されたトレチヤコフの「戦略的知識人」の理念が、ベンヤミンの複製技術論文における「オペラトゥール」の形象に引き継がれたことが判明した。くわえて、複製技術論文の草稿に記されたfreischwebendという語が、カール・マンハイムの『イデオロギーとユートピア』にたいする当てこすりであり、ベンヤミンの議論がマンハイムの知識人論を暗に批判しているという仮説を、ベンヤミンのクラカウアー『サラリーマン』への書評や、ブレヒトとともに観光を計画していた雑誌『危機と批判』の特集案などをもとに検証した。以上の研究の具体的な成果として、新潟大学でおこなわれた形象論研究会シンポジウムにて「「戦略的」知識人の使命――ベンヤミン「技術的複製可能性の時代における芸術作品」における言説戦略」と題された口頭発表を行った。くわえて、関連業績として、クラカウアーのカフカ受容を、ベンヤミンのカフカ論を補助線としながら論じた学術論文と、ベンヤミンの歴史哲学について論じた学術論文を発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究課題として掲げたテーマについて、順調に研究を進めることができた。

今後の研究の推進方策

最終年度にあたる2024年度は、本務校の業務のために延期していたドイツでの研究滞在を実施するとともに、これまでの研究成果をまとめる作業に重点を置く。具体的には、8月末から9月初旬にかけてフランクフルトに滞在し、アドルノ文書館で資料調査を行なうとともに、2025年に岩波書店から刊行予定の複製技術論文の完訳への訳者解説の執筆に取り組む。

次年度使用額が生じた理由

2023年夏にドイツでの研究滞在を予定していたものの、本務校での業務により実施できなかったため。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「私のなかのサンチョ・パンサ」:ジークフリート・クラカウアーのカフカ受容2023

    • 著者名/発表者名
      竹峰義和
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 51(17) ページ: 167~176

  • [雑誌論文] 歴史のポストヒューマニティ― : ベンヤミンの思想から2023

    • 著者名/発表者名
      竹峰 義和
    • 雑誌名

      立命館言語文化研究

      巻: 35 ページ: 43~52

    • DOI

      10.34382/0002000276

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 「戦略的」知識人の使命――ベンヤミン「技術的複製可能性の時代における芸術作品」における言説戦略2024

    • 著者名/発表者名
      竹峰義和
    • 学会等名
      形象論研究会シンポジウム「危機のイメージ/イメージの危機」
    • 招待講演
  • [図書] メディア論の冒険者たち(「ヴァルター・ベンヤミン 媒質から複製技術メディアへ」(20-31頁)、「テオドール・W・アドルノ 同一化と抵抗の弁証法」(32-43頁)2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤 守
    • 総ページ数
      400
    • 出版者
      東京大学出版会
    • ISBN
      9784130502092

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公開日: 2024-12-25  

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