現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハーマンの言語論を十全に解明するためにはさらに3つの概念を明らかにする必要がある。一つははキリスト論の概念である「属性の交流」commnicatio idiomatumである。この概念はイエス・キリストの中に神の属性と人の属性が共存するというものであり、人から見るならばイエス・キリストを通して人は神に通じているとする考え方である。 第二の概念はKondeszendenzである。このギリシア語由来の概念はドイツ語ではherabsteigen, Herablassung, Herunterlassung [Gottes](Historisches Woerterbuch der Philosophie, Bd. 4, S.942, rechte Spalte)「(神が)下(人間)に下ること」「下降」と訳される。この概念は、人間の側から神を認識することは不可能であるが、神は聖書に自らの業と顕現を人間の言語で記しているというある種の矛盾を解決するために考案されたものである。神が人間にも判るように神語を人間の言語に「翻訳」して語るということであろう。 第三の概念は上述の意味における「翻訳」である。神の言語はそのままでは人間に理解され得ず「翻訳」が必要であるというのもハーマンの思想の一部である。「語ることとは翻訳することである-天使の言語から人間の言語へ・・・」(Josef Nadler編集の全集版第2巻199頁)とハーマンは述べる。 これら三つの概念が解明されることによってハーマンの言語論の全体像が明らかになるはずである。そのためには後半年程度の時間が必要と考えている。
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