研究課題
1.前年に引き続き、十九世紀フランス文学や生成批評全般に関連する版本、参考書籍、各種資料を幅広く収集・参照し、同時代におけるフランスの文学生産の状況と作品の題名の関係を検討した。2.最新のバルザック研究の状況について国内外の研究者との意見交換を行なった。特に、フランス出張の機会のアポイントメントやメールによる連絡を利用し、バルザックの作品に関する最新の研究成果やアプローチについて議論し、特にリヨン高等師範学校のエリック・ボルダス教授やランス大学のナタリー・プライス教授からは本課題に直結するバルザックの未完作品の研究状況やエディション準備の現状について有益な情報を得た。3.バルザックの創作ノート『パンセ・主題・断片』の調査を進め、エルヴェ・ヨンによる2023年版エディションに基づいて、『十九世紀風俗研究』の構築過程における上位タイトル(「研究」、「情景」)および収録作品タイトルのラインナップについて、情報を総合し、分析を行った。その成果は研究発表「『パンセ・主題・断片』における『十九世紀風俗研究』のプラン」および論文「バルザックの題名統括――『パンセ・主題・断片』における『十九世紀風俗研究』のケース」で公開した。4.このほか、文学理論の入門書(共著)における生成論の解説論文を1件、『人間喜劇』における題名と登場人物の派生現象に関わる論文1件、バルザックの未完作品とエディションに関する論文1件を刊行し、最新の電子版エディションの状況と課題を論じる研究発表1件、『セザール・ビロトー』の生成過程(題名の変化を含む)研究発表1件を行った。5.バルザックによる『人間喜劇』補完計画「1845年のカタログ」の未完作品(50作品)の題名収集と基礎的な分析を行った。
3: やや遅れている
2022年度前期に予定していたフランス出張(新型コロナウイルスの感染状況のため、取りやめ)を補完するため、2023年度内に二回のフランス出張による資料調査を予定していたが、日程調整の理由から一度のみの現地調査となったため、原資料の調査の一部に遅れが出ている。
2023年度に行った『パンセ・主題・断片』の調査を継続し、『人間喜劇』フュルヌ版刊行準備段階、刊行時およびそれ以後の再版計画における作品のラインナップを分析し、題名の出現、維持・改変(あるいは消滅)の様態を考察する。これと関連し、「1845年のカタログ」の未完作品の生成過程の分析を進める。これらに関連する原資料についての現地調査の実施、紀要論文の刊行、研究会等での口頭発表を予定している。
理由:2022年度前期に予定していたフランス出張(新型コロナウイルスの感染状況のため、取りやめ)を補完するため、2023年度内に二回のフランス出張を予定していたが、日程調整の理由から一度のみの出張となったため。使用計画:2024年度は資料調査のためのフランス渡航を二度実施し、国内出張も複数回行う予定である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
信州大学『人文科学論集』
巻: 第11号(第2冊) ページ: 123-142
巻: 第11号(第1冊) ページ: 59-75
L'Annee balzacienne
巻: 4 ページ: 25-41