研究課題/領域番号 |
22K00465
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 耕太郎 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (40551932)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ドイツ文化史 / ヨーロッパ文化史 / ドイツメディア史 / ヨーロッパメディア史 / 健康概念史 / 衛生概念史 |
研究実績の概要 |
本研究課題にとりくんだ初年度(2022年度)では、18世紀ドイツの健康概念を明らかにするために、一般読者向けに発刊された医学雑誌の全体像を把握する調査に着手した。調査した雑誌は、以下の3雑誌となる。 Der Arzt (1759-1764)、Medicinische Unterhaltungen (1781)、Der Arzt der Frauenzimmer (1771-1773)。 これらの雑誌に掲載されていた記事を、医学分野のニュースをつたえるもの、医学知の普及を目的とするもの、症例の紹介、健康への指針を説くもの、それ以外の記事と、5つのタイプに分類した。分類した記事のなかから、2022年度において集中的に分析したのは、健康への指針を説くタイプの記事であった。これらの記事は、食事、睡眠、住環境(例えば部屋の換気や明るさ、室温等)など、人々が、日常生活のなかで、直面するケースを具体的にとりあげて、不健康を戒めたり、健康をアドバイスするものであった。 こうした記事の分析とあわせて、重要な先行研究の調査もおこなった。とりわけヨーロッパにおける養生観をあつかった先行研究を調査することで、本年度分析した健康への指針を説く雑誌記事を、18世紀ドイツにおける養生思想という大きな流れのなかに位置づける作業をおこなった。養生思想の歴史的な変遷と、同時代における受容という観点から、これらの記事の全体像をまとめる作業をおこなった。この作業では、当時の養生書のベストセラーである『健康問答』という健康指南パンフレットの内容分析もあわせておこなった。この2022年度の研究の一部は、学内の紀要にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調にすすんでいる。研究対象が、一般読者向けの定期刊行物を対象とした雑誌であることから、分析対象となる史料が大量であり、多くの記事は、表面的な分析にとどまってしまっている。このような分析途中の史料を、2023年度の研究プランのなかに組み込み、早い時期に、記事の分析を完了する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の2年目(2023年度)は、他者の健康への関心、他者の健康を配慮するようなメンタリティーの具体的な解明である。初年度であきらかにした養生概念に、準拠しつつ、人々が養生の教えに合致しているか、否かという観点から、相互の健康状態を配慮していたのかどうか、という点から、資料の分析を行う予定である。 2023年度の研究においては、主に、家長指南書として分類される文献の分析を予定してはいるが、2022年度に主に扱っていた一般向け医学雑誌の記事も積極的に活用し、印刷メディアから、他者の健康の配慮するという関心がどのように流布していったのかを具体的に明らかにしてみたい。
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