研究課題/領域番号 |
22K00470
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
石川 達夫 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (00212845)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | チェコ / グロテスク / 笑い / フラバル / ハヴェル |
研究実績の概要 |
初年度は、現代チェコ文学におけるグロテスクと笑いの具体的な事例として、作家ボフミル・フラバルと劇作家ヴァーツラフ・ハヴェルの作品を精読し、フラバルの作品については、短篇集『十一月の嵐』を訳出して出版した(松籟社、2022年12月)。同時に、笑いの分析のための理論的ツールを得るために、笑いについての良く知られた古典的な研究であるベルクソンの「笑い」などを再読・精読して、その理論のチェコ文学への応用可能性について考えた。その結果、「滑稽なのは人が物に似てくることであり、人間的な出来事が特殊なぎこちなさを生じて単なるメカニズムや自動現象、要するに生命のない運動を模倣してしまうことである」というベルクソンの洞察は、フラバルとハヴェルの笑いにも――それだけではないものの――かなり当てはまることが分かった。 ハヴェルの戯曲『通達』の場合は、融通のきかない煩瑣で奇怪な人工言語によって人間が縛られ、まさにベルクソンの言うような、人間が柔軟な生命の動きを失って単なるメカニズムや自動現象を模倣する過程が描かれていると言ってよいだろう。フラバルの短篇集『十一月の嵐』にも「自動化・機械化」による滑稽さが見られるが、フラバルの場合は死――特に自死――の表象がグロテスクおよび笑いと結合しているという特異性があり、今後、特にグロテスクについての理論的ツールを得ながら、その点の分析と考察を進める必要がある。 2年目は、更に多くの作品を精読しながらより広く深い分析を行う必要があるが、基本的には初年度と同じ方向で研究を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、学会の全国大会実行委員長になるなど、学会関係の仕事が多くてそちらに時間が取られたこと、フラバルの作品の訳出が非常に困難だったことなどのため、研究が遅れ気味になった。ただし、フラバルの『十一月の嵐』を精読して訳出・出版できたのは、一つのまとまった成果である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には初年度の研究と同じ方向で、より多くの作品に当たり、またより深い理論的枠組みを得て分析・考察を深められるように研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたコンピュータの予算の一部を資料等の購入に回して予定より多く購入し、コンピュータを購入しなかったため。 2年目の資料等の購入に充てる予定である。
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