研究課題/領域番号 |
22K00483
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中島 淑恵 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (20293277)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ラフカディオ・ハーン / ヘルン文庫 / 比較文学 |
研究実績の概要 |
本研究は、ラフカディオ・ハーンの著作に反映された世界の民話・神話および伝承を解明するために、富山大学附属図書館所蔵小泉八雲旧蔵書(通称ヘルン文庫)の書き込み調査を基盤として、国内外各地の現地調査、文献収集を行うことによって、ハーンの著作の歴史的文学的意義を明らかにしようとするものである。 令和4年度は、特にフランス語圏に関する著作を中心に書き込み調査を行う。これと並行して、それ以外のヨーロッパ世界の神話や民話、伝承についても調査を行なう。さらに、マルティニークでハーンが行った民話や伝承の取材メモの解析も行う。それらの結果を踏まえて、マルティニークでの現地調査と文献収集を行い、その成果を、マルティニークで開催される予定の国際学会で発表したい。これに加えて、国内では、鳥取・島根の日本海岸を中心に、民話や神話の実態を現地調査して、その成果を国際学会等で発表したい。令和5年度は、令和4年度に得られた成果を踏まえて、ヘルン文庫の関連図書の書き込み調査を中心とした研究をさらに進めると同時に、ハーンのマルティニークにおける取材ノートや作品に反映されている民話や神話あるいは伝承の根源を探求するために、モーリシャスおよびフランスでの現地調査と文献収集を行う。国内においては、熊本、神戸、焼津を中心にその作品に反映された民話・神話について、文献調査および現地調査を行う。令和6年度は、令和4年度および令和5年度に得られた成果を踏まえ、ヘルン文庫の書き込み調査をさらに推進するとともに、それを補完するために、ギリシアおよびアイルランドおよび英国の民話と伝承の現地調査および文献調査を行う。国内調査としては、東京・横浜を中心とした地域の現地調査および文献調査を行い、得られた成果を国際学会等で発表すると同時に論文等の著作物として発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、ラフカディオ・ハーンの著作に反映された世界の民話・神話および伝承を解明するために、富山大学附属図書館所蔵小泉八雲旧蔵書(通称ヘルン文庫)の書き込み調査を基盤として、国内外各地の現地調査、文献収集を行うことによって、ハーンの著作の歴史的文学的意義を明らかにしようとするものである。 令和4年度においては、ヘルン文庫蔵書の書き込み調査について、補佐員を雇用して継続的かつ系統的に書誌番号の若い書籍から書き込み調査を行い、その成果を随時電子化する作業を行っている。また、書き込みの内容の調査についても並行して行い、得られた成果を随時論文等にして発表を行っている。 本来令和4年度はマルティニークにて現地調査を行う予定であったが、いまだコロナ禍のため、自由な海外渡航及び調査の目途が立たず、現地差開催される国際学会の計画もとん挫したままである。そこで、比較的自由に渡航できる状態になった令和5年2月に、パリ国立図書館における文献調査を中心とした研究を行うことに切り替えた。とりわけヘルン文庫に収蔵されている19世紀後半の民俗学関係の叢書とピエール・ロチの著書の書き込みを中心に、フランスの地方、すなわち、ノルマンディーやブルターニュ、あるいはアルザス、ロレーヌ、サヴォワといった地方の民話、神話および伝承について文献調査を行った。 ここで得られた成果を基盤に、フランス国内の民話や神話、あるいは伝承が、モーリシャスやマルティニークにどのように伝播していったかを検証することが来年度以降の課題となった。ハーンが取材調査を行ったマルティニークの民話には、距離的に遠く隔たっているにも関わらずモーリシャスの民話と共通している部分がかなりある。その点の解明に今後従事して行くこととしたい。
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今後の研究の推進方策 |
上記のような状況を踏まえ、令和5年度についてはヘルン文庫の書き込み調査をさらに推進し、データベース化を進めてゆくと同時に、得られた成果を論文、講演等の形で発表できるように努めたい。また、令和4年度に得られた成果をさらに発展させて、フランス語圏の民話・神話および伝承について調査をさらに進め、とりわけモーリシャスやマルティニークでの現地調査によって文献的調査によって得られた成果を補完したい。さらに、ハーンが幼少期を過ごし、その作品にも多大な影響を及ぼしていると思われる、英国およびアイルランドについても同じように文献調査と現地調査を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により予定していたマルティニークにおける現地調査と国際学会における発表ができなかったことが次年度使用額が生じた最大の理由である。マルチニークにおける国際学会の計画はいったん白紙に戻ったようで、今のところ再開の目途が立たなないので、少なくとも令和5年度について、調査対象地域を国外は欧州(フランス、英国およびアイルランド)として、各地域の神話や民話、あるいは伝承について文献調査を行うと同時に可能であれば現地の研究者との情報交換や交流を通して、これまでの研究成果を公開すると同時に、より発展させた形での国際共同研究へとつなげられるきっかけづくりをしたいと考えている。
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