研究課題/領域番号 |
22K00491
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
中垣 恒太郎 専修大学, 文学部, 教授 (80350396)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ナショナル・アイデンティティ / プア・ホワイト / 流れ者 / 放浪者 / 民衆 / 大衆文化 / 比較文化 / フーテン |
研究実績の概要 |
「新世界の無用者」として疎外されてきた層は、アメリカの物語においてどのように扱われてきたのか。19世紀中庸に現れる「浮浪者」(tramp)との連関、文学や映画、フォーク・ソング、マンガをめぐるメディア横断的視座、さらに、歴史社会学や人類学、政治学などを参照し、アメリカ大衆文化における「疎外されてきた層」の表象を比較文学の見地から展望し、ナショナルな文学史のあり方をも問い直す。不法移民の視点や階級の問題などにも目を向けることにより、分断が進むアメリカの現況と課題をも展望する。 建国以前に遡る歴史社会研究をも参照し、国民国家概念の変容の時代の観点から、ナショナルな物語のあり方を再検討しつつ、「アメリカ的」物語がどのように生成・発展・変容してきたかを、メディアを横断した複数の物語(ナラティヴ)を検討することを通して、アメリカのナショナル・アイデンティティの行方を展望する。 具体的には、ジャック・ロンドン、シャーウッド・アンダーソン、アースキン・コールドウェル、ジョン・スタインベックなどの20世紀前半の「プアホワイト」表象に注目し、比較文学の見地から、アンダークラス(下層階級)を含めた「庶民」「民衆(folks)」を、それぞれの文化がどのように捉え、ナショナルな文学文化が形成される上でどのような役割をはたしてきたのかを考察する。民主主義を標榜するアメリカにおいて、民衆の精神文化が「アメリカ的」物語をどのように作り上げていったのか。その過程で、存在を「抹消・変容」されてしまう層のあり方にも目を向ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍以降、はじめてとなる米国での国際学会での研究発表、米国での資料調査を行うことができたが、渡航準備に時間と労力を要したことなどから、論文を軸とした成果発表は編集中、校正中の段階のものを含めて進行が遅れている。研究発表、資料調査の成果となる論文発表に今後、より一層尽力したい。
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今後の研究の推進方策 |
比較文学研究の視座に根差したアメリカ文学文化研究の成果として、引き続き「総論」と「各論」を並行しながら進める。「総論」においては、19世紀から現在までを貫く「民衆のアメリカ精神文化史」を主題に据えた研究書を課題期間中に刊行することを目指す。これまで取り組んできた「アメリカの放浪者」研究を継承・発展させながら、本研究課題を主題に据えた単著での成果刊行を目指す。疎外されてきた層を「アメリカ的」物語がどのように扱ってきたのか(「漂白」してきたのか)という観点に力点を置く。「各論」においては、各種学会での研究発表を行いながら国内外の学術誌への投稿を準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた米国での研究調査の日程が国際学会への参会にあわせて3月下旬から4月初旬となったために翌年度の執行扱いとなったため。
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