研究課題/領域番号 |
22K00501
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 知己 北海道大学, 文学研究院, 教授 (40231344)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | アイヌ語 / 古文書 / 言語復興 / 結合価 / 歴史言語学 |
研究実績の概要 |
古文書、古記録の研究としては、資料や研究が極めて少ない、明治初期の札幌地方のアイヌ語資料を含む古文書、寛政期の後志地方のアイヌ語彙集、明治後期の日本側の千島アイヌ語の古記録の解読、データベース作成、分析作業を行った。なお、千島アイヌ語の分析作業には、ロシア科学アカデミーに所蔵されている千島アイヌ語資料の分析を併用して行った。また、これらの作業と並行して、当初計画していた、古文書、古記録資料に含まれているアイヌ語の方言的特徴を推測する上で、今後、重要な手がかりとなる、現代のアイヌ語諸方言の基礎語彙との一致率を自動的に分析、集計するシステムの考案、実験作業を進めた。その結果、概ね所期の結果を得ることに成功しており、最終的な結果の集成に向けて、研究上必要なツールを整備した。 具体的成果として、まず、これまであまり資料的価値を認められていなかったアイヌ語の古文書、古記録資料が、今後のアイヌ語の言語学的研究において重要な意義を持つものであることを述べた概説を執筆した(英文)。また、これまでに得られている、アイヌ語古文書の研究成果を応用した研究として、アイヌ語の古文書が言語復興において決定的に不足している、語彙資源の不足を補う上で極めて有用であることを述べた論文を執筆した。さらに、古文書資料を解析する上で不可欠な現代のアイヌ語の文法現象について考察した論文を3編執筆した(うち1編は英文)、これらは、主にアイヌ語の統語論、特に「結合価」に関わる現象に関するもので、古文書アイヌ語資料の分析にも欠かせないものである。これらを通して、現代のアイヌ語にみられる例外的な現象が古文書資料にも現れているとみなせること、これにより、アイヌ語古文書、古記録が、現代のアイヌ語の考察や歴史的変遷を考察するための基礎資料として役立つことが示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大が当初は収まらなかったため、所蔵先が外来者の来訪を認めなかったり、個人蔵の資料については、所蔵先に迷惑をかける恐れがあったため、長時間にわたる撮影、閲覧の便宜が得られなかった。従って、当初予定していた、必要な資料を現地で直接見て詳細に研究する、ということが非常に困難であったが、画像データを取り寄せることでなんとか基礎的な分析作業を行うことができたので、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画においては必ずしも中心的な課題ではなかったが、アイヌ語の歴史的研究においては、これまで文献資料そのものが少なく、正確な情報が相対的に少ない、千島方言の研究を進展させることがどうしても必要である、ということが明らかになりつつある。そのため、日本側の古文書資料を解析する上でも、千島方言のデータをこれまで以上に加えることが今後の研究には有益と思われる。そのためには、日本側の古文書資料に加えて、ロシア側の資料を入手、分析して、双方を付き合わせる必要がある。既に画像データは入手済みであるので、今後は千島方言にもこれまで以上に留意しつつ、アイヌ語の古文書資料の分析を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に新型コロナウイルス感染症の流行が収まらず、予定していた文献調査を行うことが、所蔵機関や所蔵主の都合で不可能、あるいは困難になってしまったため生じたもので、そのうちの一部は画像データの取り寄せにより対応したので、計画を見直し、不可欠な調査を行うとともに、研究成果をまとめて海外(ドイツ)の学会に研究発表を申し込んだところ、受理されたので、海外での研究発表に使用する予定である。
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