研究課題/領域番号 |
22K00523
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
大塚 裕一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (70638436)
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研究分担者 |
宮本 恵美 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (80623511)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 失語症 / 名詞 / 多義 / 親密度 |
研究実績の概要 |
一般的に言語聴覚士は、多くの語彙が「多義」であるにもかかわらず「単義」と捉え、 失語症の評価や訓練を実施している。そして、語彙の「中心義」の理解、表出が可能であればその語彙の運用能力は保たれていると判断している。つまり、現況での失語症者に対する評価や訓練では、日常生活で運用される正確な語彙の理解・表出能力は把握できないと考えている。この問題点を解決するために、我々は、語の意味を部分的な共通性によって結びついた集合体とみなすという認知言語学の意味ネットワークの視点を用いて研究を実施している。具体的は、「名詞」について失語症者が意味ネットワークのどの部分まで理解や表出が可能かを失語症のタイプ別、重症度別に明らかにすること、また、その結果をもとに失語症者の言語知識をモデル化し、今後の失語症評価、訓練教材の提案に寄与することを目的としている。 令和5年度は、名詞の語義別単語親密度の値を条件に多義語の語義を3つに分類した言語理解課題を用い、課題成績に影響する個人因子の有無を明らかにした。また、語義別単語親密度の効果が健常者を対象とした名詞の理解課題においても示されるのかを検討した。結果、健常者の課題成績の平均正答率は 94.29%であった。加えて、従属変数を課題成績、独立変数を年齢、性別、教育年数に設定して重回帰分析を行ったところ、年齢のみが課題に有意な影響を与える独立した関連因子であった。また語義別に成績を検討したところ、語義別単語親密語の効果は見られなかった。今後、名詞の多義語の理解課題においては、認知的加齢を念頭に置いての結果の解釈が重要であると考える。今年度は、数名の失語症者に対しても同言語課題を実施したが、まだ、分析には至っていない。令和6年度はさらに失語症者の対象を増やし、検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各病院施設における感染症対策の影響もあり、対象の失語症患者を多くは集めることができなかったことが最も大きな原因である。
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今後の研究の推進方策 |
熊本県在住の言語聴覚士である研究協力者にも失語症者に対する名詞の語義別単語親密度の値を条件に多義語の語義を3つに分類した言語理解課題の測定を依頼し、データを蓄積する。その後、解析を行いその成果を学会で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象者が集まらず使用する予算が大幅に減ったため。また、分析で使用する予定であったPCの購入をまだ行っていないため。
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