研究課題/領域番号 |
22K00529
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研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
韓 喜善 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (80756156)
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研究分担者 |
難波 康治 大阪大学, 国際教育交流センター, 准教授 (30198402)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 撥音 / 知覚判断 / 自由異音 / 学習者 / 学習レベル / 生成 / 調音音声学 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本語の母音間の撥音の認知において「調音器官への接近の度合い」がどのような影響を及ぼすかについて知覚実験を行ったものである。日本語母語話者と学習者が、語中に「撥音+母音」と「母音+母音」を含むテスト語(五千円、ご声援)の3モーラ目の判断をどのように行っているかについて検討した。 テスト語(五千円)の3モーラ目の音声は「閉鎖音」に加え、「母音」「鼻母音」「鼻音化した摩擦音」など完全な閉鎖が行われていない音声も含まれる。 日本語母語話者については、調音器官の狭窄が強ければ撥音として認知されやすいものの、むしろ 狭窄が緩い母音に近い音声の方が母音間において自然だ と感じられるという点で、川上 (1987)の見解を支持するものであった。 一方、韓国語を母語とする日本語学習者については、韓国語のように語末鼻音を明確に閉鎖する言語話者にはこのような音声は撥音としての判断を下しにくかったものと解釈できる。特に、初級学習者は、撥音の知覚においても韓国語と同様に閉鎖鼻音として明確に生成されているかどうかに注目し、閉鎖が明確ではない撥音の音声を撥音として判断しない傾向があった。しかし、上級学習者は、調査した3 群のうち最も正答率が高かったものの、母音間での撥音の自由異音としての母音の容認度は、 日本語母語話者の容認度に達していなかった。したがって、日本語母語話者のような判断という基準からみれば、上級学習者であっても撥音という音素の習得はまだその途上にあるとも解釈できるということが明らかになっ た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通り、調査が進み、国内外の学会において研究発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは撥音の知覚判断について調査を行なってきた。今後、撥音の音声について調音音声学的に調査をしていく予定である。そのために、リアルタイムMRIを用いて撥音の調音時における調音運動の様子を撮像し、学習者による音声データを収集している。また、撥音の音声については地域差、具体的には標準日本語と関西地域との違いについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
音声実験や発表(学会、研究会)、図書や資料の購入のために研究費が必要である。
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