研究課題/領域番号 |
22K00536
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
大野 仁美 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (70245273)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 談話文法 |
研究実績の概要 |
今年度は以下のように研究を進めた。 (1) ナラティブ資料の収集. この研究は分析対象として長めのナラティブ資料を必要とするが、今年度は現地調査を実施し新規に収集したのに加え、過去の録音資料(1990年代のもの)のテキスト化も順調に進めることができた。これらはそれぞれ順次トランスクリプション→アノテーション→データベース化している。 (2) 談話文法上重要な「節と節を連結する役割をする項目」の分析. ZOOMを利用した母語話者との共同でのテキスト化(音声資料を文字に書き起こす作業)を通して、これまで分析を進めていた項目(等位接続詞および同定詞)についてはその出現を予測できる段階までにその機能の分析を精緻化することができた。加えて、これまであまり分析が進められていなかったさまざまな間投詞についても、ナラティブを背景に考察を深めた。 (3) バリエーションの考察. さまざまなナラティブ資料の構築の結果、次のようなバリエーションを考察することが可能になった。A. ナラティブに見られる通年の変化:特に借用語を用いたcomplementationに大きな変化が見られることが資料でも裏付けられた。B. 異なる語り手による同一テーマの複数のバージョン:人生における大きな出来事に関して、それに関与した年代の違う語り手によるナラティブテキストを比較することで、解釈の違いがナラティブの構造をどのように変えるかを観察することができた。C. 同一内容の民話の異なる言語による複数のバージョン:ガナ語の母語話者の協力を得て、ガナ語文法の記述を進めた。これによって、文法的に妥当なガナ語のテキスト分析が可能になりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた調査・研究のための渡航が実現できていなかったが、今年度は年度末に現地調査を実施することができた。テキストの収集とそのトランスクリプションに関しては、母語話者との協力により、「研究実績の概要」に述べたとおり順調に進んでいる。ELANを用いたコーパスの作成についても、専門家の協力を得て進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
ガナ語の文法研究が進められたことによって、節の連結方法がグイ語のそれと異なることが明らかになってきた。今後は、グイ語に見られる特殊な現象が、系統的に近い言語との間でどの程度共有されているのか(いないのか)を、グイ・ガナ両言語を対照的に考察することで進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた調査・研究のための渡航が感染症の拡大等により予定通りに実現できていないため次年度使用額が生じている。来年度以降現地調査等を実施することによって使用する予定であるが、それが諸般の事情から叶わない場合は、すでに収集済みの音声資料をテキスト・コーパス化する作業を拡大して対応する。
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