研究課題/領域番号 |
22K00548
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
熊切 拓 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (60802387)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アラビア語方言 / 語り / ナラティブ / 語りの構造化 / 談話 / モダリティ / 語順 / ミラティブ |
研究実績の概要 |
アラビア語チュニス方言(チュニジア)はアラビア語方言のひとつである。本研究課題の目的は、①現地調査を通じて、チュニス方言による口承文芸を記録し、その「語りの技法」に関して言語学的分析を進めること、②チュニジアの語り部の活動を記録し、チュニジア社会における語りの文化について理解を深めることにある。 新型コロナウィルスまん延の影響のため、これまで本研究課題の実施に大幅な遅れが生じていたが、2023 年度は、ようやくチュニジアへの渡航が可能となり、本研究課題および、これに先行する若手研究「アラビア語チュニス方言の口承文芸の言語学的研究」(19K13183)を推進することができた。 具体的には 2023 年 8 月と 2024 年 3 月の 2 度の現地調査を行った。2023 年 8 月の調査では、チュニス方言で書かれた『アル=アルウィー物語集(全 4 巻)』の聞き取り調査を終え、この資料のすべてを研究に利用することが可能となった。 同物語集は主としてチュニスを舞台としているが、しばしばチュニジア南部に広がる砂漠や南部に暮らす人々が登場し、また、南部特有の語彙や言い回しも用いられる。そこで、チュニジア南部の文化と言語の理解を深めるため、2024 年 3 月は、チュニジア南部(ガベス、タタウィーン、マトマタ)を訪問した。現地では、調査協力者との関係構築および予備的な調査を進め、今後の研究のための足がかりを得た。上記 2 回の調査に協力してくださった多くのチュニジアの方々に心より感謝を申し上げる。 本研究課題の成果の公表として 2023 年度は、2 本の論文執筆と、1 回の口頭発表を行い、アラビア語チュニス方言の語りの言語学的特徴の分析をさらに深めることができた。今後は、チュニジアの語り部文化に関する大規模な調査を遂行するとともに、積極的に国際学会などで成果の発表に努める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題は、若手研究「アラビア語チュニス方言の口承文芸の言語学的研究」を発展形として構想・計画されたものであるが、コロナ禍による渡航制限のため、若手研究で予定されていた現地調査が実施できず、研究計画そのものを2年延長せざるをえなかった。その影響で、本研究課題も2年の遅れが生じている。 今後は研究計画を大幅に見直し、残り2年の研究期間の間に規模の大きい調査と研究成果の公表を行い、遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
残された研究期間で本研究課題の目的を達成するためには、これまで以上に密度の濃い調査・研究を推進する必要がある。現在までに構築したチュニジア国内のネットワークを活用し、大規模な現地調査を実施する。また、研究成果の波及効果を高めるために、国際学会や、国際学術誌における公表を集中的に試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
先行する研究課題である若手研究「アラビア語チュニス方言の口承文芸の言語学的研究」の遂行が、コロナ禍によって大幅に遅れており、2023 年度がこの若手研究の最終年度であったため、優先的に経費を執行した。 研究目的と内容は、本研究課題と強く関連しているものの、上記の事情から、本研究課題において次年度使用額が生ずることとなった。 残された 2 年の研究期間において、より規模の大きな現地調査と国際学会における発表を実施し、有意義かつ効果的な経費の執行を行うことを計画している。
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