研究課題/領域番号 |
22K00549
|
研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
鯨井 綾希 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (10757850)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | コーパス / 語彙調査 / 言語単位 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本語という個別言語に存在する語彙体系のうち、文を構成する語の働きにより分類される品詞を取り上げ、大規模コーパスの計量分析を通して具体的な語彙の整理と分類を行うことで、品詞体系の再構築を目指すものである。 研究初年度となる2022年度は、1980年代から現在に至るまでの先行研究の収集とその整理に多くの時間を割いた。「品詞」とされるもののそれぞれで、構文的・意味的な位置づけがどのような観点から検討されてきたかを調べた。その結果、助詞の分析方法の多様性や、名詞の研究の発展性に関する知見が得られた。自身の過去の研究成果も踏まえながら、形容動詞を軸とした副詞や名詞への品詞論的広がりや、現行の品詞体系における量的相関についても検討し、次年度以降の研究に向けた方向性を一定程度見出した。 また、先行研究の構文論的・意味論的アプローチを参考にしながら、定量化の方法と研究資料の拡張可能性についても検討した。従来から利用されている書き言葉コーパスに限らず、方言のデータベースも活用して研究を実施し、言語変種の把握にも貢献しうるデータ分析の方法を試行した。 さらに、語・文・文章という言語単位の相互をつなぐ役割を持つ品詞の性格を踏まえ、言語単位をつなぐ語彙論的問題に踏み込んだ研究も行った。 総じて2022年度の研究活動は具体的な研究を行うための背景の精査とそこから発展させうる研究方法の検討、ならびにそれらの分析の試行的な実施という点に集約されると言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学内研究室の移動をはじめとした研究環境の変化により研究に注力できる時間を十分に割けなかったことや、外部要因で研究成果の公開に時間がかかってしまっていることにより、計画段階よりもやや遅れた進捗状況であると判断した。 ただし、1980年代から現在に至るまでの研究動向の洗い直しを行うことで、解決すべき研究対象の優先順位を定めることができ、資料の選定に合わせていくつかの語彙論的方法論を試行することもできたため、研究自体に一定の進捗はあったとみなした。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降に取り上げる具体的な品詞と、その計量分析の方法論について目途が立ったため、それらの分析の成果公開を具体的に示すことが重要である。本年度は論文集の形での公開を目的とした論文作成が主であったが、次年度は採択後迅速に公開される学術論文誌への掲載を目指す。 また、本研究課題は個別的な品詞の定量的記述に終止することではなく、品詞体系の見直しに貢献しうる成果を出すことを目的としている。次年度以降は、個別研究を体系的研究へつなぐための方略を検討することも重要であると考える。
|