研究課題/領域番号 |
22K00580
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
岩田 美穂 就実大学, 人文科学部, 准教授 (20734073)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 文法史 / 並列 / ト / ヤ / ニ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、現代日本語に豊富に存在する並列表現形式の史的変化を体系的に整理することである。並列形式は、並列できる要素によって、名詞、述語句、両用の3種類に分けられる。名詞や述語句並列のみを担う形式は上代・中古から存在するのに対し、両用形式は中世以降に豊富に発達する。その点で、名詞・述語句並列のみを担う要素は、並列形式としては原初的であり、日本語の並列表現形式の基盤となっていると言える。本年度は、名詞並列形式を担うト・ヤ・ニについて取り上げ、論文として発表した。 トやヤはこれまで格助詞のト、間投助詞のヤから発達したことは指摘されてきたものの、実際の資料に基づいて調査が行われていない。また、ニに関しては歴史的な側面から考察されていない。そこで、上代・中古を中心としてト・ヤ・ニがどのように発達してきたのかを資料に基づいて考察した。 トは上代から例が見られ、その8割程度が述語部に「争う」や「寝(共寝)」などの相互動詞を取っているが、中古に至ると述語の動詞は多様になる。このことから、並列のトは共同者を表す格助詞の「ト」を由来とし、参与者を二者表示する例から拡大していった様子を実証的に示した。ヤによる並列は中古までは「AヤBヤと~」の形で引用のトを伴う場合がほとんどであり、引用句内から発達していったと見られる。引用句内で用いられることからヤは間投助詞由来と考えられる。ニは、中古において「AニBを添える」という意味の累加を表す格助詞の用法から発達した可能性が高いことを論じた。 現代語においてトとニは全部列挙を、ヤは一部列挙を表す。トとニが全部列挙となるのは元々の格助詞の用法に由来すると考えられる。ヤが一部列挙を表すのは引用句で用いられる性質が影響していると考察した。同類の変化が、ノ・ダノ並列にも見られることがわかっている。よって、ヤの変化は、ノ・ダノ並列と同種の変化として位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた名詞句並列形式の調査・考察が進められたため、概ね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、連用形並列およびテ形並列を調査し、これまで考察が進んでいる他の形式と合わせて、体系的整理を進め、学会で成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会・研究会が引き続きオンラインで開催されるものも多く、交通費を予定よりも使用しなかったこと、また本研究に関わる必要な図書が多くなかったことなどにより、使用が少なかった。次年度は、対面で行われる学会や研究会に積極的に参加し、成果を発表する予定である。
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