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2022 年度 実施状況報告書

現代日本語における形容詞派生動詞の意味研究―自他対応動詞を中心に―

研究課題

研究課題/領域番号 22K00586
研究機関名古屋大学

研究代表者

李 澤熊  名古屋大学, 国際機構, 准教授 (50362207)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード形容詞派生動詞 / 認知言語学 / 多義語 / 多義構造 / 概念メタファー / 一時的な特性 / 恒常的な特性
研究実績の概要

研究実績(1):学会発表
本研究では、現代日本語の「深まる」と「深める」について、「深い」との関連性を指摘しながら、その意味用法の詳細を明らかにした。先行研究の記述によると、この2語は単義語扱いになっているが、ここでは(単義語寄りの)多義語として位置付けて分析を行い、2語が持つ複数の意味と各意味の関連性を明らかにした。また、「~まる/~める」に見られる<段階性・程度の変化>という意味特徴に加えて、この2語は認知言語学における「容器」のイメージ・スキーマが深く関わっていることを指摘し、<収斂・複雑さ・濃密さ>という意味特徴が抽出できることを検証した。さらに、形容詞派生動詞に見られる完結的(telic)特性というのは、あくまでも段階性の問題であり、必ずしも最終的な終結点を想定しないということを確認した。最後に、「深い」との意味の対応関係については、stage-level propertyとindividual-level propertyなどの観点からその要因を明らかにした。
研究実績(2):研究論文
本研究では形容詞派生動詞「丸まる」と「丸める」が持つ複数の意味を記述し、それら複数の意味の関連性(多義構造)について考察した。その結果、「丸まる」と「丸める」についてスキーマ的意味・フレームを含めて、それぞれ3個と11個の多義的別義を認定することができた。また、別義間の関連性については、比喩の観点から考察を行い、別義間の関連性を明らかにすることができた。さらに、2語の多義構造については、Langacker が提案している「スキーマティック・ネットワークモデル」(schematic-network model)と籾山が提案している「統合モデル」を援用して、詳細に検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

おおむね予定通り、考察対象語の意味分析(多義語)を行い、一部の研究成果については学会などで発表を行った。

今後の研究の推進方策

2022年度の成果に基づき、考察対象語の関連語との比較・分析を行う予定である。具体的には、「形容詞+くなる、くする」との比較となる(例:深まる:深くなる、深める:深くする)。これらの比較分析を通して、形容詞派生動詞の意味記述をより精緻化する。なお、関連語との違いを明らかにする前提として、Fillmoreが提案するフレーム(frame)の概念が有効であると考えている。つまり、「~まる/~める」と「形容詞+くなる、くする」は、事態変化というフレームにおいて、焦点化する構成要素が異なっていると仮定し、分析を進める予定である。
なお、当初考察対象としていた「暖かい → 暖まる:暖める」については、厳密に言えば周辺事例となるため、つまり「暖かまる:暖かめる」という形ではないため、考察対象から外すこととする。

次年度使用額が生じた理由

残った520円分については、翌年度分として請求した助成金と合わせて図書費に充てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 「丸まる」と「丸める」の多義構造─認知言語学の観点から─2023

    • 著者名/発表者名
      李澤熊
    • 雑誌名

      名古屋大学人文学研究論集

      巻: 6 ページ: 311-330

    • DOI

      10.13039/501100001691

  • [学会発表] 形容詞派生動詞「深まる」と「深める」の意味分析2022

    • 著者名/発表者名
      李澤熊
    • 学会等名
      日本語文法学会第23回大会

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公開日: 2023-12-25  

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