研究課題/領域番号 |
22K00603
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 武史 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (40412291)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 音韻の揺れ / 分節(音節分け) / /t/ の叩き音化 / /j/ の融合 / 英語 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで真正面から捉えられることが少なかった英語における音韻のさまざまな揺れ、すなわち発音のバリエーションのうち特に強勢や音節に関わるものに焦点を当て、その真の原因を探るとともに、多くの研究者が当然のものとして受け入れている強勢位置と母音の長さの関係や分節(音節分け)の問題等に新たな説明を与えようとするものである。 初年度である今年度は主に分節に関する問題に取り組んだ。英語の分節には複数の考え方があり、例えば2つの主要な発音辞典であるLongman Pronunciation Dictionary, 3rd edn.(Wells 1990)とCambridge English Pronouncing Dictionary, 18th edn.(Jones 2011)でもその方針は明確に異なる。前者は母音・子音に関するいくつかの異音現象に基づく分節であるが、それでも分節に一貫しない点や異音分布を正しく予測しない点が見受けられる。これらの問題点のうち特に satire のように Wells (1990) が /t/ が叩き音化を受けないとしながら音節末尾に位置するとする語に焦点を当て、/t/ が音節初頭に位置するか、もしくは音節末尾と音節初頭に同時に属すると考える方が理にかなっていると論じた。この考え方は /j/ の融合を受ける issue のような語において /s/ が音節末に位置していたと考えられる事実と相反するように思われるが、これは satire の場合は母音間に位置するのは1つの子音だけであるので /t/ が先行音節の末尾に分節されると後続音節に初頭子音を要求する制約に反してしまうが、issue の場合は母音間に位置するのが /sj/ であり、/s/ が先行音節の末尾に分節されても /j/ が後続音節の初頭に位置するので問題が生じないと説明することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の計画通りに進んでいるから。
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今後の研究の推進方策 |
分節については今年度扱った現象以外にもアメリカ英語における弱母音の交替現象のような興味深いトピックがほかにもあるので引き続き考えていく。また、強勢位置と母音の長さの関係についても考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については特に新しい資料を使用する必要がなく、手持ちの資料で賄えたため。旅費については新型コロナウイルス感染症蔓延等のため出張を控えたため。また、人件費・謝金については英語論文の校正を依頼する必要が生じなかったため。翌年度も必要に応じて適切に予算の執行に努める。
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