研究課題/領域番号 |
22K00684
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
今井 典子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 教授 (30510292)
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研究分担者 |
多良 静也 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (00294819)
杉浦 理恵 東海大学, 国際文化学部, 教授 (60413738)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インプット・フラッド (input flood) / 中学校検定教科書 / 課題解決型言語活動 / リーディング |
研究実績の概要 |
・本研究では、input flood の手法を用いた文法事項の定着を目ざしたリーディング教材を策定し(「読むこと」では意味処理が必要)、さらに、連動させる文法指導につながる効果的なポスト活動(統語処理が求められる「話すこと」の活動を実施)を検証することである。実証検証で取りあげる文法事項は、先行研究などを基に「受け身」とし、2023年度Pilot Study(1学期2校に依頼) の結果を踏まえ、別の中学校2校で検証授業を実施した。授業では、中学校検定教科書6社3学年分のreadabilityの調査結果を踏まえ使用するinput floodとして使用するリーディング教材、さらにリーディング教材後に行う課題解決型言語活動(Focused task)を確定し、2023 年10月から翌1月にかけて、調査対象を中学3年生として検証授業調査を行った。効果を測る筆記試験(pre-test / post-test / delayed post-testの3回)と情意アンケート(事前と事後)のデータを収集できた。現在、3回全てのテストを受けた130人分のデータ結果を分析・考察中である。 ・中間報告として、8月開催の全国英語教育学会香川研究大会では、中学校検定教科書6社3学年分の調査結果のまとめを発表し、多くの現場教員の方々に情報提供ができた。具体的には、インプットに焦点をあて、教材作成の際に把握しておくべき特徴として、「読むスピードに関するWPM (words per minute)、「読みやすさの指標であるreadability(リーダビリティ)」、「語彙レベル(New Word Level Checkerを用いて分析)」、「特定の文法事項(受け身、現在完了形)の教科書に登場する頻度」を取り上げ、分析の詳細を分かりやすく発表できた。あわせて、これらの調査結果を踏まえた研究内容を共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・実証検証授業の実施にあたり、本調査校とは異なる2校の公立中学校で1学期にPilot Studyを実施した。その結果を受けて本調査で使用する筆記試験問題を決定できた。中学校検定教科書6社3学年分のreadabilityの調査結果を踏まえ、検証授業で使用するinput floodとして提示するリーディング教材とリーディング教材後に実施する課題解決型言語活動(Focused task)を確定し、作成した検証授業の指導案を基に8月に協力いただける中学校の担当者と打ち合わせを行った。協力校である2校への依頼文書送付、学校長への挨拶のため学校訪問もした。 ・2023 年10月から2024年1月にかけて、本年度当初の計画通り、実証検証授業の目標文法事項を日本人学習者にとって困難であるとされる「受け身」とし、調査対象を中学校3年生として検証授業調査を行った。A中学校の4クラス、B中学校の3クラスに協力をお願いし、それらのクラスを大きく4つのグループに分けて調査を実施した。グループは、Input flood(Group 1: リーディングの後の質問が「内容に関するQ & A」、Group 2:受け身文を用いたQ & A)→ Focused task、Focused task→ Input flood(Group 3: リーディングの後の質問が「内容に関するQ & A」、Group 4:受け身文を用いたQ & A)の4つである。検証授業の効果を測る、筆記試験(pre-test / post-test / delayed post-test)と情意アンケート(事前と事後)、そして、Focused taskの後の「振り返りシート」を現在分析中である。3回全てのテストを受けた生徒のデータを抽出した結果、分析対象となるデータは4つのグループ合わせて130人分となった。
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今後の研究の推進方策 |
4月から5月にかけては、調査で実施した筆記試験(pre-test / post-test / delayed post-test)と情意アンケート(事前と事後)の量的分析、及び、振り返りシートの質的分析をまとめ、考察する。加えて、全国英語教育学会福岡研究大会への発表申込みに必要な内容について議論する。6月は学会提出用の予稿集を作成する。6月から8月にかけては、全国英語教育学会の発表の準備、そして発表を行なう。8月から9月にかけては、全国英語教育学会の論文(ARELE)への投稿準備、投稿をする。10月から翌年1月にかけては、研究のまとめとして研究報告書の作成、活動事例集の作成、研修会の企画・計画、など研究の総括を行なう。活動事例集の内容は、中学校の教育現場で利用できるように、複数の文法事項を取りあげたinput flood のリーディング教材を提供する。これには、語彙数やreadability、推奨する読了時間など、授業での活用を容易にする情報を含める予定である。2月は研修会の準備を行い、現場の教員が参加しやい3月に研修会を開催し、冊子も配布する。
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次年度使用額が生じた理由 |
・予算残に関しては、2023年度の全国英語教育学会が近県で開催されたことより交通費がかからなかったこと、また、1学期実施のPilot Study の中学校2校、及び2学期実施の検証授業の中学校2校とも研究代表者の県内で行ったため、交通費がかからなかったことが挙げられる。また、本検証2名の研究分担者との打ち合わせ会議は全てオンライン(Zoom)、メール会議で実施したため、旅費が発生しなかったためである。しかし、最終年度の2024年度は、全国教育学会が福岡であること、事例集作成や研修会開催に向けた打ち合わせ会・研修会のための旅費、また情報収集のための国内外の学会などに参加を計画しているため、旅費支出としたい。
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