研究課題/領域番号 |
22K00695
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
小山 敏子 大阪大谷大学, 教育学部, 教授 (20352974)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 電子辞書 / スマートフォン / アプリ / 検索行動 / 英語教育 / Writing / Productive / Receptive |
研究実績の概要 |
本研究では、大学生英語学習者が言語情報の検索ツールとして多用しているスマートフォンに焦点をあて、電子辞書との比較も試みながらモバイルディバイスの違いが学習効果に与えている影響を、彼らの検索行動を分析することで明らかにしていくことを目的としている。その上で、学習者の英語習熟度、これまでの辞書使用歴や辞書指導の経験などが、使用するディバイスの選択と検索行動にどのような影響を与えているのかを、インタビューデータ(言語データ)などから分析し、学習者要因を探ろうとしている。 研究初年度のR4(2022)年は、基盤研究(C) 19K00777(2019年度~2022年度)で着手していた検索行動のビデオ分析について、先行予備実験(小山・薮越,2021)とは背景が異なる実験協力者を得て分析したデータを発表し、論文化して公表した。本研究では、参加者2名に2種類の問題をそれぞれ電子辞書とスマホで語彙・文法問題を解答してもらった。両名とも英語教員を目指す学部4回生であり、日常の英語学習では電子辞書を使用していたが、英語の基礎語彙量やTOEICのスコアなどに差があった。実験では、両名の解答時間に差は見られなかったが、語彙量が多くスコアが高いStudent Cのほうが多く語句を検索し、1週間後の検索語の再認率が高いという結果になった。この理由の探索を試みたビデオ分析からは、Student Cは既知の語句でも確認のため検索し、同時に電子辞書の用例などを有効に活用している様子が見られた。 また、前年度より着手していた電子辞書やスマホ使用とWritingタスクとの関係についてもデータ分析して学会発表した。これは対面授業とオンライン授業での大学生の学習(検索)行動の変化の有無を調べようとした実験で、2つの状況下での学習者の検索ツールの選択や行動は異なるが、学習成果のWritingには違いは見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前回の科研プロジェクトから継続して行ってきた電子辞書やスマホアプリを使った検索行動のビデオ分析2回の結果から、辞書検索行動には、学習者の英語基礎力や語彙量などのみならず、彼らがこれまで受けてきた辞書指導や辞書使用歴などが関係することが想定されるに至った。 また、ProductiveなWritingタスクと辞書やスマホの検索行動の関係についても前回の科研プロジェクトの結果から見いだされたReceptiveのタスク(語彙文法問題や読解問題)と検索ツールとの関係同様、使用検索ツールと学習成果との相関は見られないことが示唆された。 これらの知見をもとに次の研究段階に進むことができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
R4(2022)年度の研究結果を受けて、引き続き、辞書検索行動と学習行動とその結果との関係を詳細に分析していく。具体的には、以下の2点を考えている。 1)ビデオ分析を一歩進め、視線計測の分析を行う。同時に、刺激再生法を使って学習者の検索行動の質的データを収集する予定である。 2)Writingタスクと検索行動の分析をより精査して行うため、新たなデータを取得し、特にWritingの語彙レベルと検索行動との関係などを詳しく分析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、参加、発表した学会がオンライン開催となったため、当初支出予定にしていた出張費が生じなかったため。
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