研究課題/領域番号 |
22K00699
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
高原 周一 岡山理科大学, 基盤教育センター, 教授 (20289135)
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研究分担者 |
妻藤 純子 岡山理科大学, 教育学部, 教授 (10804049)
井本 美穂 岡山理科大学, 教育学部, 准教授 (40780705)
坂本 南美 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (40804810)
原田 省吾 岡山理科大学, 教育学部, 講師 (80804749)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | モンゴル国 / CLIL(内容言語統合型学習) / 日本語教育 / 英語教育 / 理科教育 / 図画工作科教育 / 音楽科教育 / 家庭科教育 |
研究実績の概要 |
昨今のグローバル化により、外国人の日本語学習者は増加傾向にあり、外国語としての日本語教育の需要は高くなっている。本研究では、外国語教育の手法として最近注目されているContend and Language Integrated Leaning(CLIL:内容言語統合型学習)を海外での日本語教育に適用する。具体的には、モンゴル国の児童・生徒を対象として、日本語と理科・図画工作科・音楽科・家庭科のCLIL授業を開発・実践し、効果を検証する。また、モンゴル国における英語でのCLIL授業など、今後の研究の展開可能性についても検討する。 1年目である2022年度はモンゴル国のカリキュラム分析を行った。また、科研費メンバー5名全員で9月に8日間の日程でモンゴル国を訪問し、情報収集や授業実践を行った。具体的な実績は以下のとおり。 (1)カリキュラム分析:モンゴル国の教育に適合したCLIL授業を開発するため、日本のカリキュラムとの比較しながらモンゴル国の初等・中等教育カリキュラムを分析し、その成果を論文として発表した(計3報)。また、これをもとに2023年度に実施するCLIL授業の内容を検討した。 (2)現地での情報収集:モンゴル国の小中高一貫校(計4校)で授業実践および学習環境を視察した。視察した学校の教員、モンゴル国立教育大学教員、JICAモンゴル事務所、現地の学校に派遣されているJICA隊員からモンゴル国の教育に関する情報を収集した。ナラン学校において児童・生徒の実態調査アンケートを実施した。 (3)現地での授業実践:ナラン学校において日本語と理科のCLIL授業実施した。また、同校において、図画工作・音楽・家庭・英語のミニ授業を実施した。ウランバートル第16番学校において英語と理科のCLIL授業を実施した。これらの授業の効果を検証するため、授業後に生徒を対象としたアンケートを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目である2022年度の当初の予定は以下のとおりであった。 (1)カリキュラム分析:モンゴル国の教育に適合したCLIL授業を開発するため、モンゴル国の学習指導要領に当たる文書および教科書の内容から初等・中等教育のカリキュラムを分析し、日本のカリキュラムとの比較しながら学習内容を検討する。 (2)CLIL授業の開発:モンゴル国の学校で行われている授業実践および学習環境について視察し、モンゴル国の実情に合わせたCLIL授業の開発を行う。 (1)については予定通り実施し、さらに、2年目以降に予定していた論文執筆を前倒しで行うことができた(図画工作科・音楽科・家庭科に関するモンゴル国のカリキュラム分析、計3報)。(2)についても予定通り実施し、さらに、当初予定していなかったJICAモンゴル事務所、現地の学校に派遣されているJICA隊員からもモンゴル国の教育に関する情報を収集することができた。また、ナラン学校において児童・生徒の実態調査アンケートを実施した。これは英語科、音楽科、家庭科、美術科について計45の設問からなる総合的な調査で、339名分を集めることができた。これについては現在翻訳・分析中である。 これらに加えて、2年目以降に予定していたCLIL授業の実践(日本語と理科および英語と理科)も行うことができた。また、ナラン学校において図画工作・音楽・家庭・英語のミニ授業を試行的に実施し、児童生徒の日本語力や各教科に関する知識・技能の実態を知ることができた。これらの授業の効果を検証するための生徒を対象としたアンケートについては、既に翻訳は完了しており、現在分析中である。情報発信のためのwebサイトも開設した。 以上のことより、本研究は「当初の計画以上に進展している」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の成果をもとに、2年目である2023年度はモンゴル国の教育に関する情報収集・カリキュラム分析、CLIL授業の開発、CLIL授業実践・検証、成果の発表を行う予定である。2年目も現地での活動が必要となるため、科研費メンバー5名全員で9月に7~12日間の日程でモンゴル国を訪問する。具体的な研究の推進方策は内容は以下のとおりである。 (1)情報収集・カリキュラム分析:1年目にモンゴル国の学習指導要領に当たる文書および教科書の内容からカリキュラム分析を行ったが、実際の学校現場での運用等について追加で調査が必要になったので、現地で授業見学および情報収集を実施し、その成果をもとにカリキュラム分析を再度行う。 (2)CLIL授業の開発:カリキュラムの分析結果に基づき、モンゴル国の研究者とともCLIL授業の開発に取り組む。また、授業実施後に授業・教材の改善を進め、モンゴル国の実情に合った効果的なCLIL授業法及び教材を提案する。 (3)CLIL授業実践・検証:モンゴル国の小中高一貫校(4校程度)において、理科・図画工作科・音楽科・家庭科のCLIL授業(言語は日本語もしくは英語)の実践を行う。授業記録・質問紙・記述記録、インタビューの分析を通してその効果を検証する。 (4)成果の発表:これまでの成果をまとめ、学会での発表および論文執筆を行う。3年目に本研究の成果をまとめた図書の執筆を予定しており、その準備を行う。webサイトでの情報発信を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
モンゴル国の教育に適合したCLIL授業を開発するため、当初予定していたモンゴル国のカリキュラム分析に加え、モンゴル渡航時に現地の児童・生徒対象の教育実態調査アンケートを追加で実施した。このアンケート結果の集計・翻訳費用が発生したこと、および、モンゴル渡航時の現地での通訳費用等の必要経費が予定より高額になったたことにより、2022年度予算が不足することとなったので前倒し支払い請求を行った。しかし、教育実態調査アンケートの集計・翻訳に関する準備(翻訳者の確保等)が間に合わず、発注が2023年度になったため、次年度使用額が発生した。 次年度使用額は主に教育実態調査アンケートの集計・翻訳費用として使用する。また、本研究に必要な一部の経費(例えば学会発表のための旅費等)を大学の研究費で支払うことを想定していたが、これにも使用する予定である。
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