研究課題/領域番号 |
22K00719
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
岩中 貴裕 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (50232690)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 言語学習観 / 体験的学習観 / 分析的学習観 / 体験的学習方略 / 分析的学習方略 |
研究実績の概要 |
日本人大学生を対象として言語学習観と英語力の関係を明らかにするための調査を実施した。47名の学部学生が調査に参加した。調査参加者をTOEIC(R)スコアによって3つのグループに分けた。スコアの平均は上位グループが761.67、中位グループが630.00、下位グループが532.81であった。52項目からなるアンケートによって、調査参加者の「分析的学習観」、「体験的学習観」、「分析的学習方略」、「体験的学習方略」、「自信度」を数値化しグループ間での比較を行った。また受講開始時(第一時点)と受講終了時(第二時点)で同じアンケートに回答させることによって、教育的介入によって言語学習観の変容をもたらすことが可能であるかを検証した。 第一時点で収集したデータを分析した結果、「分析的学習観」、「体験的学習観」、「自信度」の3項目においてグループ間で有意な差があった。「分析的学習観」は、下位グループが上位グループと比較して有意に高かった。一方、「体験的学習観」は、上位グループが下位グループと比較して有意に高かった。「自信度」は上位グループが中位グループ及び下位グループより有意に高かった。 第一時点と第二時点で収集したデータを分析した結果、下位グループのみ「体験的学習観」と「自信度」で有意な差があった。いずれも第二時点の方が有意に高かった。学習観が変わることは成人には比較的まれであるという指摘もなされているが、半期間の教育的介入で変容する可能性があることが確認できた。 下位グループに変化があったことについてその意義を述べる。英語学習に十分に時間をかけているにもかかわらず、その努力がなかなか成果に結びつかない学習者がいる。そのような学習者は学習観や学習方法に問題を抱えている場合が多い。そのような学習者に対してどのような教育的介入が望ましいのかを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記した調査を実施することができた。研究計画調書作成の際に形成していた仮説とは異なる結果も得られているがそれについての解釈も滞りなく進んでいる。以上により「(2) おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は3年間にわたって同じ調査参加者を追跡調査することによって、1)言語学習観は教育的介入(授業)によって望ましいものへと変容させることができる、2)体験的学習観を持つ学習者は分析的学習観を持つ学習者と比べると、Willingness to Communicate、有能感が高く不安が低い、3)体験的学習観を持つ学習者は分析的学習観を持つ学習者と比べると、英語学習に対する動機づけが高い、4)体験的学習観を持つ学習者は分析的学習観を持つ学習者と比べると、英語が教授言語として用いられている授業に対して肯定的な態度を示す、5)体験的学習観を持つ学習者は分析的学習観を持つ学習者と比べると、最終的に高い英語コミュニケーション能力を獲得する、という5つの仮説を検証することを目的としている。 2022年度は合計で約100名の学生(調査参加者)がアンケートに回答した。彼等を対象とした調査を継続する。研究計画調書に記述した内容通りに研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
42nd Tailand International Conferenceへの参加旅費を科研費から捻出する予定であったが、学会からの派遣となったため旅費を負担する必要がなくなった。そのため次年度使用額が生じている。 使用計画について説明する。本研究課題は言語学習観、つまり英語という科目固有の学習観を対象としている。しかし、この1年間、調査を行った結果、他の授業科目を含めた科目共通の学習観についても検討する必要性を感じている。また本研究課題遂行のためにパス解析が必要であることも明らかになった。次年度使用額と次年度請求額を合わせて、計画していた内容の研究と新たに必要となった研究に従事する。
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