研究課題/領域番号 |
22K00719
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
岩中 貴裕 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (50232690)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 言語学習観 / 体験的学習観 / 分析的学習観 / 体験的学習方略 / 分析的学習方略 / 有能感 / 教育的介入 |
研究実績の概要 |
日本人大学生を調査参加者として彼等の言語学習観と英語コミュニケーション能力の関係を明らかにすることを試みた。同じ学部に所属する63名の大学1年生が調査に参加した。調査参加者を入学時のTOEIC(R)スコアによって3つのグループに分けた。スコアの平均は上位グループが526.19(SD:38.89)、中位グループが430.00(SD:18.71)、下位グループが326.67(39.41)であった。52項目からなるアンケートによって、調査参加者の「分析的学習観」、「体験的学習観」、「分析的学習方略」、「体験的学習方略」、「自信度」を数値化しグループ間での比較を行っ た。受講開始時(第一時点)と受講終了時(第二時点)で同じアンケートに回答させることによって、大学入学後に言語学習観の変容が生じるかどうかを検証した。 第一時点で収集したデータを分析した結果、「分析的学習観」、「体験的学習観」、「分析的学習方略」、「体験的学習方略」、「自信度」いずれにおいてもグループ間で有意な差がなかった。B2レベル以上の学習者とB1以下の学習者を比較すると学習観、学習方略、自信度に有意な差が見られるが、B1以下の学習者間では差が生じないことが示唆された。 第一時点と第二時点で収集したデータを分析した結果、どのグループも時点間で有意な差はなかった。授業を担当している教員が学習観を意識し、教育的な介入によって変容を促さなければ大学入学以降に学習者が自らの気づきによって学習観を変容させることは困難であることが示唆された。調査参加者の中に入学以降にTOEIC(R)スコアが大きく上昇し、730点を超えた調査参加者が4名いた。その調査参加者は分析的学習観が低く体験的学習観が高い、自信度が高いという特徴を持っていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記した調査を実施することができた。大学入学後に言語学習観の変容が生じるのかについてはまだ明らかになっていない点があるが、これまでに行った調査と他の研究者によって行われた調査から、新たな仮説を形成することができた。以上により「(2) おおむね順調に進展している。」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
大学生は入学時点で最低でも6年間は教科として英語を学んでいる。その間に自分自身の言語学習観を形成している。これを大学入学以降に変容できるかどうかを検証するための調査を実施する。令和4年度、令和5年度に実施した調査に加えて、AIとのインタラクションの機会が調査参加者の言語学習観にどのような影響を与えるのかを明らかにする調査を実施する。 EFL環境である日本では、授業外で意味交渉のために使用する機会が限られている。AIとのインタラクションによって英語使用を疑似的に体験することができる。これによって調査参加者の体験的学習観と自信度の向上がもたらされると考えられる。この調査を行う。 これまで調査に参加した調査参加者に対するインタビュー調査を並行して行う。教育的介入無しに言語学習観を変容させた調査参加者を対象としたインタビューによって何がきっかけとなって学習観の変容が生じたのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
Asia TEFL 2023への旅費等を科研費から捻出する予定であったが、所属先大学から国際学会発表助成を受けることができたため旅費等を科研費で負担する必要がなくなった。 使用計画について説明する。令和6年度は国際学会での発表を3件予定している。そのうちの2件は海外で実施される。そのための旅費として使用する。
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