研究課題/領域番号 |
22K00759
|
研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
森山 新 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10343170)
|
研究分担者 |
山本 冴里 山口大学, 国際総合科学部, 准教授 (00634750)
李 暁燕 九州大学, 共創学部, 准教授 (70726322)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 複言語主義 / 複文化主義 / 間文化的シティズンシップ教育 / 東アジア / 民主的文化能力 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東アジアがともに生きるための民主的文化能力を育む外国語教育を、欧州の事例を参考に模索することである。前回の科研では日韓を中心とした研究・実践にとどまり、日中をはじめ東アジア全体に拡大する上で課題が残った。本科研では日韓対象の研究・実践は維持しつつ、その成果を東アジア全体の和解と共生に拡大した。また民主的文化能力の参照枠(RFCDC)をシティズンシップ教育の評価尺度として採用した。 日中間でも日韓で展開した対話型交流を通じ過去の対立克服と和解を模索する実践が望ましいが、昨今の政治的事情や両国の民主主義や人権等に対する考え方の違い故に対話型実践を実施するには障害に直面した。そのため、初年度に引き続き、中国の歴史、政治、思想などについての先行研究、中国人を対象にしたAutobiographyを継続し、彼らがどのように自身のアイデンティティや対日イメージを形成させたかについてデータを集積、日中間の民主主義や人権観の違いなどを先行研究から分析、日中間に横たわる歴史的対立の根本原因を探るとともに、どのような対話型教育実践が可能か考察を深めた。 またRFCDCを活用し、東アジアが過去を克服しともに生きるにはどのような能力が必要かを考察した。 分担者(山本)は、センシティブなトピックについての議論を英語で行う実践研究を実施した。また、就学前幼児を対象に複言語教育の形のひとつである「言語への目覚め活動」のための教材開発とその活用成果を論じた。ここでは、通常接することのない複数の言語の観察、比較、相対化を通して、自己中心的な視点からの解放を目指した。 分担者(李)は、複言語複文化環境でともに生きるためのコミュニケーション法について事例研究を行った。福岡市のコミュニティにおいて、外国人住民の「言葉の壁」を越えるためのやさしい日本語使用の利点と限界、及びその克服について明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近年の日中間の政治状況などの原因で、実際に中国の大学との間で対話型教育実践を行うことが非常に困難な状況に置かれているため。 2018年度より開始した「複言語・複文化主義に基づいたシティズンシップ教育としての日本語教育」(基盤研究C)がコロナ禍等の理由で延長、2023年度はその最終年度であったことから、結果本科研の進捗に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
上述したように、近年、日中間の政治状況などの原因で、実際に中国の大学との間で対話型教育実践を行うことが非常に困難な状況に置かれていることから、それに代わり、日台間の教育実践も模索していきたい。2024年度には台湾で北東アジア言語教育研究会の第3回研究会を開催するとともに、台湾の研究者とのネットワークを構築しながら、日中関係、さらにはその近隣の国々(例えばフィリピンなど)を含めた東アジア全体におけるシティズンシップ教育のあり方を模索していきたい。またそのために求められる東アジアにおける民主的文化のための能力とはどのようなものかについても模索していければと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
近年の日中間の政治状況などの原因で、実際に中国の大学との間で対話型教育実践を行うことが非常に困難な状況に置かれているため。 2018年度より開始した「複言語・複文化主義に基づいたシティズンシップ教育としての日本語教育」(基盤研究C)がコロナ禍等の理由で延長、2023年度はその最終年度であったことから、結果本科研の進捗に遅れが生じた。 当面、日中間の交流は困難が予想されるため、日台、もしくはその他の国との交流に切り替えて研究・教育実践を拡大していく予定である。
|