研究実績の概要 |
本研究では日本語母語話者の中国語学習者を対象として、発音の学習効果を高められる教材の実現を目指している。2020年度までに発音教材の第1版(ver1.0)が作成されたほか、知覚の側面における一定の効果が認められた。しかし、複母音と子音(j, q, x, zh, ch, sh, r, z, c, s)に関しては、多くの改善すべき点が残された。したがって、2021年度ではこれらの問題点を解決するために、教材の第2版(ver1.1)が作成された。 2022年度では、教材の第2版の効果を検証した。具体的には、同じ大学で中国語を勉強する日本語母語話者を対象に、第1版を利用するクラスと、第2版を利用するクラスの知覚テストの結果を比較した。その結果、次のような事実が明らかになった。 まず、複母音ie, uo, iou, uai, ueiについては、第2版と第1版の正解率に一定の有意差が認められた。ieは89.47%から98.89%に、uoは77.63%から97.78%に、iouは72.37%から94.44%に、uaiは92.11%から100.00%に、ueiは93.42%から100.00%に上昇したことが判明した。 次に、子音の結果について説明する。10種類の子音うち、9種類に顕著な有意差が観察された。具体的には、jは65.79%から100.00%に、qは77.63%から96.67%に、xは71.05%から95.56%に、zhは82.89%から95.56%に、chは75.00%から98.89%に、shは80.26%から100.00%に、zは88.16%から100.00%に、cは86.84%から96.67%に、sは81.58%から97.78%に上昇していることがわかった。これらの事実から、教材の第2版(ver1.1)はおおむね満足のいく結果を得ていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画には、複母音と子音(j, q, x, zh, ch, sh, r, z, c, s)の問題が追加された発音教材の第2版(ver1.1)の知覚における効果を検証する目的が設定されている。 上記の「研究実績の概要」からわかるように、2022年度の実験の結果から、5種類の複母音と9種類の子音で第2版の正解率が有意に高かったことが判明したため、教材のアップデートによって、良質な教育効果が生まれたことが明らかになった。 したがって、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
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