研究課題/領域番号 |
22K00764
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
劉 驫 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (00756223)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 発音教材 / 知覚訓練 / 産出 / 知覚 / 中国語 |
研究実績の概要 |
本研究では日本語母語話者の中国語学習者を対象として、発音学習の効果を高めることができる発音教材の実現を目的として行われている。2022年度では、知覚の面における発音教材の第2版(ver1.1)の効果に関する検証が行われた結果、その有効性が証明された。一方で、産出の面における効果はまだ検証されていないため、2023年度では、産出の面における教材の効果を検証するため研究を進めてきた。以下、研究結果の概要を述べる。本研究では、某大学で中国語を勉強する日本語母語話者を対象に、発音教材を利用するクラスと利用しないクラス(通常の授業)の結果を比べ、教材の産出面における有用性を検証した。そこで、知覚の面と同じような効果が認められたため、本教材は知覚と産出の両面において高い学習効果をもたらすことができるものであることが判明した。具体的には、一音節の声調では第三声、二音節の声調の15種類の組み合わせでは、前音節10種類と後音節7種類の組み合わせにおいて統計的に有意な効果が認められた。また、2種類の単母音と1種類の複母音においても同様の効果が示唆された。さらに、全21種類の子音のうち、計8種類において有意差が認められた。この結果は、2023年度の九州中国学会にて発表されており、言語学および外国語教育学などの分野の専門家から意見を聴取した後、その意見を反映した内容を論文としてまとめ、学術雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では、発音教材の第2版(ver1.1)の産出面における効果を検証するという研究目的が設定されている。「研究実績の概要」から明らかになるように、実験の結果を見ると、一音節の声調では第三声、二音節声調の15種類の組み合わせにおいては、前音節が10種類で後音節が7種類の組み合わせで統計的に有意差が見られた。また、2種類の単母音と1種の複母音においても同様の傾向が示唆された。さらに、全21種類の子音のうち、計8種類において有意差が観察されたため、本教材は知覚面に加え、産出面においても高い教育効果をもたらすことができることが判明した。この結果は当初設定した研究計画に見合ったものであるため、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として挙げられるのは、現時点の教材ではカバーできていない初級中国語の発音項目の拡充というものである。具体的には、鼻音nとng、軽声、三音節声調の練習問題の追加などが挙げられる。これらの練習問題を追加するとともに、本研究の総括を行うことが、最終年度の主なタスクであると考えられる。
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