研究課題/領域番号 |
22K00778
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研究機関 | 愛知工科大学 |
研究代表者 |
森 明智 愛知工科大学, 工学部, 准教授 (10878408)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リーディングストラテジー指導(EFL環境下) / リーディングにおける困難さ / 対話による困難さの解決 / リーディングストラテジーと英語リーディング力 |
研究実績の概要 |
本研究は、当初の目的に準じて、日本の大学における日本人英語学習者を対象に、学術的な内容を含む英語リーディング学習において、読み手が直面する困難さや疑問点を、仲間および教員を含む話し合いによって解決する指導を通して、英語リーディング力を高める事を目的としている。また、上記の指導法は日本人英語学習者を対象として実践された例が見られず、その点に加えて、本研究分野では比較的新しい構造方程式モデリングを用いた分析手法を用いる点が本研究の新規性と言える。 当初の研究目的に従い、令和4年度4月から8月における国内の私立大学における日本人英語学習者73名を対象に、上記の指導法を実施し、質問紙法による調査(探索的因子分析)と英語リーディングテストの結果を含めた分析を行った。 分析の結果、質問紙に対する探索的因子分析は5因子構造となり、上記の指導法に関する下位尺度がまとまった一つの因子(第5因子:α = 0.77)として検出され、研究協力者達の間で、上記の指導法に基づく内容が学習において意識的に使用されている事が明らかとなった。また、これらの5つの因子と英語リーディングテストを含めた構造方程式モデリング分析の結果、一つの因子(第2因子)が英語リーディングテストに有意な影響を与え、第5因子は他の因子に正の影響を与えつつ、間接的に英語リーディングテストに影響を与えている結果となり、適合値も許容範囲となった(χ2乗値 = 2.48、自由度 = 8、p値 = 0.96、GFI = 0.98、AGFI = 0.97、RMSEA = 0)。これらの成果がJACET中部支部紀要第20号にて査読付き論文として掲載され、英語教育への還元を一定程度なすことができた。 また、上記と同様の研究目的にて、学習者の自己省察を用いた研究結果が令和5年度8月における大学英語教育学会第62回国際大会にて発表の認可をいただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、本研究が研究助成をいただいた最初の年度であったが、質問紙法を用いた研究が比較的興味深い結果を示し、論文投稿においては査読者からのサンプル数の不足や分析結果についての指摘をいただき、将来的な課題はありつつも、査読付き論文として学会誌での掲載をいただくことができた。また、英語論文の投稿において、英文校正の必要性について指摘を受けたが、専門業者に依頼する場合にかかる費用が生じたが、研究助成をいただいていたため、問題なく処理することができた。 また、令和3年度において、同様の研究を行う中で、質問紙ではなく、読み手が直面した困難さや疑問点と解決の方法について、学習者の自己省察シートを用いて分類を行う研究を実施していたが、令和4年度において再度結果を分析したところ、英語リーディングテストを目的変数、自己省察シートの結果を説明変数とした重回帰分析を行ったところ、調整済みR二乗が0.77となる興味深い結果となった。この結果も令和5年度8月における大学英語教育学会第62回国際大会にて、審査の結果発表の認可をいただいた(Analysis of Collaborative Discussion to Solve Difficulties in EFL Reading)。 この結果を含め、さらに質的データ分析の観点から、専門性を含む英文を読む際に、読み手が直面する困難さと解決について話し合う内容を録音し、疑問点そのものの明確化、その疑問点の解決の様相についての分析も進めており、量的データ、質的データ、双方の観点から研究が発展していると言える。 上記の内容を含め、現時点ではおおむね順調に進展している、と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の研究の推進方策として、研究成果として既に言及した点であるが、質問紙調査だけでなく自己省察を用いた分析結果が、大学英語教育学会国際大会にて研究発表として認可を受けているが、内容について、令和5年度、もしくは令和6年度における査読付き論文として投稿し、日本の英語教育に成果を還元する事を考慮している。 また、本研究に対する専門家からの指摘として、量的研究だけでなく、量的データからは見えない質的データを分析するように助言を受けている。よって、令和4年度、9月~1月において、日本国内の大学にて、日本人英語学習者を対象とした専門的な英語リーディングの授業内において、本研究が対象とする指導を実践し、研究協力者達による話し合いの様子を録音し、分析を進めている最中である。結果については、令和5年度における学会もしくは研究発表を行い、令和6年度における論文投稿を考慮している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、物品費についての支出および学会年会費の支払いについてはは当初の予定通りであったが、英語論文作成と投稿に関連して生じた英文校正費の支出額、また、掲載の可否は不確定の内容が含まれつつも結果的に掲載が認められたことによって生じた論文掲載費による支出などが、当初では予想しにくい点であり、これらの内容が当該年度の所要額と当該年度の実支出額との間に差が生じた理由である。 次年度使用額の使用計画として、物品費については概ね当該年度にて不足のない状態であるため、学会年会費に加えて、英文校正費、論文掲載が認められた場合の掲載費として使用する予定である。
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