研究課題/領域番号 |
22K00804
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
長尾 明子 龍谷大学, 国際学部, 准教授 (60570124)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | L2 writing / feedback types / 選択体系機能言語学 / Genre-based approach / 訂正フィードバック / systematic review |
研究実績の概要 |
本年度は,課題3 を重点的に研究を進めてきた。課題3は,選択体系機能言語学 (Systemic Functional Linguistics; SFL)を基盤としたシドニー派ジャンルベースドアプローチ(genre-based approach; GBA)を導入したL2ライティング教授法を通して,訂正フィードバックが日本人大学生の英語アカデミックライティング能力にどのような影響を与えているかを明らかにするである。 はじめに,2001年から2023年に発行された L2ライティング実証研究論文 (n = 101)を対象に, システマティックレビューを実施した。その結果,過去10年間,L2ライティング・フィードバック研究の論文を発信する主なjournal publishersは, Assessing Writing, Journal of L2 Writing, System であったGBAを中心としたL2ライティング・フィードバックと一般的なL2ライティング・フィードバック研究に見られる顕著な共通点は、地理的、文脈的、および方法論的な次元を包含していること、アジアが出版物に関して最も多い地域であること、ほとんどの研究がEFLの文脈に位置していること、直接的および間接的なフィードバックの融合がほとんどの研究を典型化し、ローカルおよびグローバルなフィードバックに大きな焦点が当てられていることである。さらに、非実験的な研究方法としてケーススタディが主流であった。また,多くのライティングやリーディング研究は,SFL GBAの有効性を確認しているにも関わらず,SFL GBA を導入したL2ライティングと,そのフィードバックの関係を検証した研究は限られていることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【現在までの進捗】 本研究課題の進捗状況は概ね順調である。継続的に国際学会の発表を実施することができている。しかし,研究論文執筆に関して当初の計画よりやや遅延している。そのため2024年度はデータ収集を継続しながら論文執筆への十分な時間を確保することが重要となる。また,2024年度は統制群と実験群のデータをさらに収集することでデータの質及び妥当性を確保することを念頭に,SFL GBA L2ライティング授業実践を実施する予定である。
【当初予期していない事態への対応】 たとえば,統制群及び実験群の両方のデータが十分に確保できない場合,翌年度も同様な実験を実施することで十分なデータを確保する。
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今後の研究の推進方策 |
<課題 3>を継続的に研究する。<課題 3>ライティングフィードバック効果に関連する検証は,要因:1事前事後テストの有無,2教員からフィードバックの種類別,3ライティングタスク内容別,4学習者のフィートバックに対する意識の項目について,(a) 外国語学習者と第二言語外国語学習者の比較検証と(b) 英語能力の高低グループを対象に比較検証する。これに加え,SFL GBA準拠ライティンクグ教授法及び訂正フィードバックによるエッセー書き直しタスクを一定期間通して学習した実験群と,SFL GBA未経験である統制群を比較し,英語学習者が言語自体の習熟度をどのように高めるかを検証する。 2023年度に実施したパイロットスタディーでは,申請者は,日本の大学1年生を対象に15週間のSFL GBA L2ライティング教授法を実施した。英語学習者は,アカデミックエッセイの草稿作成, 教員からのフィードバック,リライトを体験した。調査参加者は,英語能力の高い学習者(n=11)と低い学習者(n=10)で構成されおり,刺激再生法を取り入れた半構造化面接の中で,添削フィードバックに基づいて自分のオリジナルエッセイと改訂エッセイを分析した。さらに,参加者は日本の高校での英語の授業において,英作文のフィードバック活動にどの程度参加し,どのようなフィードバックを困難と感じるかについて語った。 その結果, 高校での形成的なライティング評価や改訂の経験は限られている場合が多く, ミクロレベルの言語修正が中心であったことが判った。さらに,英語能力高学力の学習者は,フィードバックを通して,自分の学問的アイデンティティに統合することに長けていたが,低学力の学習者は技能の習得に重点を置いていた。さらに,暗黙的なフィードバックは,一般的に低学力学習者には効果が少なかった。
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次年度使用額が生じた理由 |
円安等の国際的状況変化のため,海外での国際学会発表回数が当初想定していた回数よりも少なくなったため,次年度使用額が生じた。
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