研究課題/領域番号 |
22K00820
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
拝野 寿美子 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (30747001)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 継承ポルトガル語教育 / 在日ブラジル人 / 継承語の資産性 / 言語文化継承 |
研究実績の概要 |
2022年度は、専門家からの意見聴取や文献渉猟、関係者へのインタビューを計画していた。専門家への聴取は未実施ではあるが、関係者へのインタビューや文献渉猟に関しては予定通り実施できた。 特に、継承ポルトガル語教師自らの「移民子弟としての日本語・日本文化継承」の経験と、継承ポルトガル語教育への、それらの応用や影響については、複数の聴取を実施することができた。日本語を継承した経験を下敷きに、継承ポルトガル語の教材作りに工夫を施している事例もあった。ただ、このような事例は稀で、多くの場合、教育内容への具体的な応用というよりは、日本語や日本文化の継承が、教師としての姿勢や信念を形作る一助となっていることが明らかとなった。 研究成果については、在日ブラジル人を対象とした継承ポルトガル語をテーマとしたシンポジウムや、ブラジルで実施された国際セミナーで発信した。前者では、継承ポルトガル語教育が日本社会に与えるポジティブな影響(継承語の現代的価値)を、当事者であるブラジル人住民に訴える機会となった。後者では、教師たちの多くが日系人であることや日本語を継承している経験が、日本の継承ポルトガル語教育に少なからぬ影響を与えていることを明らかにし(継承語の普遍的意義)、日本の継承ポルトガル語教育の独自性をブラジルの言語教育研究者に発信することができた。さらに、科研費の研究成果公開促進費(学術図書)の助成により2023年度に刊行する予定である『継承ポルトガル語の世界:地域とつながり異文化間を生きる力を育む』(ナカニシヤ出版)においても、その一部を公開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究データについては、文献渉猟および継承ポルトガル語教師へのインタビュー(対面2名、書面4名)を通して、得ることができた。 研究成果についても、「研究実績の概要」で述べた通り、ポルトガル語による発表を2件実施できたことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と考える。 一方、2022年度に予定していた専門家への意見聴取は、日程の調整がうまくいかず実施を見送った。研究計画提出時は日本の専門家のみを予定していたが、上述した教師へのインタビューから、ブラジル在住の継承日本語教育の専門家への聴取を優先するべきと考えたことによる。こちらについては、日本在住の専門家とあわせて、2023年度以降も引き続き、聴取の実現に向けて調整を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に得られたデータから、ブラジルにおける近現代の言語政策や、継承日本語教育の歴史を調べる必要性があることがわかった。そのために必要な専門家への意見聴取や必要な文献渉猟を継続する。 日本国内の継承ポルトガル語教室の視察や教師へのインタビューも継続する。特に、継承語教育の現場が地域に開かれていること(継承語教育の現代的価値)を検証するため、日本人ボランティアへのインタビューに着手する。 研究成果発信については、2023年6月11日の異文化間教育学会第44回大会開催校シンポジウムで概要を発表する。同年10月には、ポルトガルのアヴェイロ大学で実施される第6回SEPOLH(欧州継承ポルトガル語シンポジウム)にて、ポルトガル語で発表を実施する(応募済み)。その際、参加者である各国の継承ポルトガル語教師に、ブラジル在住時の言語文化継承の経験(継承語教育の普遍的意義)について、アンケート調査を実施する予定である。さらに、日本在住の外国ルーツの人々の言語継承(在日コリアン、在日ペルー人、在日中国人など)についても、意見交換ができる場での発表を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
94,674円が次年度使用額として生じた理由として、当初予定していた専門家への意見聴取が、日程調整の不調により実施できなかった点が挙げられる。2023年度は、日本在住の専門家1名とあわせて、2022年度に実施できなかった専門家への意見聴取を実施する予定である。
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