研究課題
空白の林業労働者の文化運動史を解明するために、まずは林野庁の職員(技術職、技能職とも)によって組織されていた「全林野労働組合」の文化運動資料の整理を行ってきた。全林野労働組合が解散した2006年に、当該労組の文化運動と国際交流の資料を引き取った木村和氏が自宅に建てた「全林野文化資料室」で保管してきた大量の資料群のうち、本研究の1年目は、写真1万枚以上と音源テープ200本のデジタル化に注力し、適宜メタデータの作成も行った。本科研メンバー研究者3名と資料を保存しているエル・ライブラリースタッフと研究補助員とで研究会を2回開き、資料の内容把握と今後の分析の進め方について話し合いを行った。資料のデジタル化によって研究者間で資料の共有が容易になった。また、音源がカセットテープのままだと再生にも困難があったが、デジタル化したことによって内容の把握が進んだ。その結果、東北地方を中心とする音楽サークルの活発な活動が明らかになり、キーパーソンとして「藤川ツトム」の存在が注目されることとなった。さらに、全林野労組の中にあった8つの文化運動サークルのうち、文芸関係の内容分析のために基礎データとして、機関誌『ぜんりんや』の索引採録を進め、ほぼ全号からの収録が終了した。年度末にはこれらの資料の紹介と全林野労組の東北地方における音楽活動について、研究代表者の谷合が青森中央学院大学北原研究室主催の研究会で報告を行った。さらに、全林野労組全体の動きを知るため、林野会館(東京都文京区)に保存されている全林野労働組合の大会資料を研究代表者谷合がとりあえず10年分閲覧し、特に文化運動関係の活動経過などを調査した。
1: 当初の計画以上に進展している
1年目の目標であった写真とカセットテープのデジタル化が終了し、メタデータ(目録)についても作成が進んでいる。さらに、2年目に作成予定であった、全林野労働組合機関誌『ぜんりんや』の索引作成も終了した。
同人誌やミニコミ、文書資料類のメタデータ(書誌情報)を採録し、目録を完成させていく。その内容の読み込みと分析については2年目の後半以降の作業となる。音楽サークル活動については解明が進んできているので、このまま調査を進める。調査に当たっては、元全林野労働組合委員長や、後継労組である林野労働組合幹部などの協力を得ており、引き続きその協力によって、東京の本部が保存している組合の大会資料なども閲覧調査させてもらうことになっている。それらの総合的な調査分析により、労働組合にとっての文化サークルの意味や意義を解明していく。同時に、公務員労働組合である全林野の資料の残し方(アーカイブズとしての特徴)はアーカイブズ学的に非常に興味深い。その分析も実施できれば当初目標を超える成果を残せることとなるが、文化運動以外の資料は当該労組の所蔵であり、労組の管理下にあるため、外部の研究者が利用するには配慮が必要である。幸い大いなる理解と協力を得られているが、限られた時間を有効に活用して集中的に資料調査を行いたい。
購入予定だった物品のうち、カセットテープのデジタル複写機については無料で入手できたのと、他にも購入予定であった物品(文具など消耗品)については資料整理の進展にともなって予定変更の必要が出てくる見込みとなったので、購入を控えた。2023年度については、旅費の支出がプロジェクト開始前の見込みよりも増えるので、残額については主に旅費に回す。この理由は、資料閲覧調査のために予定より多くの東京出張が必要であること、さらに閲覧しなければならない資料が膨大にあることが判明したため。
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社会文学
巻: 57号 ページ: 105-107
図書館界
巻: 74 巻 2 号 ページ: 148-149
10.20628/toshokankai.74.2_148
唯物論
巻: 96号 ページ: 70-84