研究課題/領域番号 |
22K00896
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高木 博志 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30202146)
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研究分担者 |
谷川 穣 京都大学, 文学研究科, 教授 (10362401)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 黒住教 / 金光教 / 近代日本の宗教と文化 / 民衆宗教 / マキノ省三 / 映画 / 近代天皇制 |
研究実績の概要 |
1895年から1908年まで150号刊行された、黒住教機関誌『国の教』を7年間かけて、研究分担者の谷川穣氏とともに「『国の教』記事目録」を作成し、黒住教学院ホームページでオープンアクセスとして公開した(https://kurozumikyo.com/gakuin/kuninooshie.html)。黒住教は、教派神道の中でもっとも早く独立し、教義の体系化を果たし、その機関誌『国の教』は各界著名人の寄稿により、明治前期にすでに総合雑誌の体をなす。今後、黒住教の研究に大きく貢献すると思われる。また『人文学報』120号・特集号「近代京都と文化」を編集し刊行した。民芸やキリシタン布教、幕末・維新期の畿内の風聞など、水準の高い論考を掲載することができた。 金光教の遊廓布教については、各地の教会資料を検討するとともに、戦前期の歌舞伎・映画関係者の信仰の実態について調査をすすめている。 また人文科学研究所の共同研究「近代日本の宗教と文化」研究班(高木班長)で、2022年度に10回の共同研究会を開催した。歴史学・映画史・宗教史・音楽史・美術工芸史などの学際的な研究を進めている。共同研究では、民衆宗教を含め、当該テーマについて考察を深めているが、たとえば辺境の地である弘前の「賊軍」士族によるキリスト教や洋楽受容が先端であったおもしろさや、金光教の自主制作の映画・芝居による字も読めない民衆布教の実態などを議論し深めている。 天皇制と宗教の問題は、本研究の重要な柱であるが、2022年9月には今尾文昭氏の案内で百舌鳥古墳群のフィールドワークをし世界遺産がかかえる問題や歴史的な変遷を考えた。2023年2月11日には、「近現代天皇制を考える学術集会」をもち研究者・市民、110名の参加者を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「近代日本の宗教と文化」のプロジェクトも関わり、2023年2月には、『人文学報』120号・特集号「近代京都と文化」を刊行し、7本の研究、3本の史料紹介を掲載した。 コロナ禍で京都周辺の調査にとどまったため、次年度には遠方への調査を再開したい。 黒住教・金光教ともに研究を進めるとともに、「近代日本と宗教と文化」研究班も10回、毎回、15名前後の参加者と、共同研究を深めている。研究課題に関わる研究者も招へいした。また金光教の遊廓布教にかかわり史料調査をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年11月5日には、レクチャー上映会「大正期の映画と民衆宗教:活弁士による『性は善』上映を通して」(冨田美香、児山陽子、夫婦活弁士むっちゃん・かっちゃん、楽士野原直子)を、京都大学百周年記念館・百周年記念ホールで開催する。これは金光教の信者である尾上松之助・マキノ省三・中村鴈治郎などの映画関係者・芸能者が、民衆宗教の布教のあり方を模索した営みを考える企画である。映画や芝居の教義や御蔭譚は、文字も読めないサバルタン・民衆に届くものであったという。研究課題に関わって、21篇の研究論文を収め500頁を越える、高木博志編『近代京都と文化―「伝統」の再構築』(思文閣出版、2023年)を2023年秋には刊行する。 また2025年度の高木博志編『近代日本の宗教と文化』の出版に向けて、研究会で議論を深める。また『近現代天皇制の基礎的研究』の共同研究をはじめる。 また金光教の遊廓布教については、コロナ禍も一段落したので、岡山・姫路・京都などで史料調査を進めて行き、東京での近代天皇制にかかわる調査を再開する。
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