研究課題/領域番号 |
22K00917
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松重 充浩 日本大学, 文理学部, 教授 (00275380)
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研究分担者 |
塚瀬 進 長野大学, 環境ツーリズム学部, 教授 (80319095)
毛利 康秀 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 准教授 (90805996)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 満洲 / 張作霖 / メディア / 中国東北地域 / 日中関係 |
研究実績の概要 |
本研究は、張作霖地方政権下の日本と中国の現地メディアが如何なる活動を展開し、それを通じて如何なる現地社会認識が喚起され、それが如何なる現地社会展開のダイナミズム発動の契機となって行くのかを、日中間の相互連関・相互変容という分析視角から明らかにするものであるが、初年度である令和4年度の研究実績概要は、以下の通りである。 先ず、研究代表者においては、本研究遂行において必要不可欠な前提となる、諸メディアから現地認識に関わる関連事実の摘出・整理とデータベース化を遂行し、本研究の基盤の確保を行った。具体的には、『満洲日日新聞』、『満蒙』、『足跡/亜東』の各現地刊行定期刊行物に掲載された記事から中国認識内包するものを摘出し、巻号、作者、タイトル、頁数、地理情報、掲載図像、記載内容キーワード(人名、組織名、文物名、対象分野など)の情報をExcelソフト入力したデータベースを構築した。特に、これまで資料データの整備・検討が十分なされてこなかった当該期現地中国認識におけるビジュアル情報の影響を考察する上で好個な事例を提供すると考えられる『足跡/亜東』のデータベース(1429件)は、現地認識の重層的構造を検討する前提確保に繋がる重要な成果と位置付けられる。 また、研究分担者においては、後述の研究成果に示されるような、現地社会認識を大きく規定してきた歴史継承体としての現地社会構造の分析および、絵葉書などの当該期現地社会を映し出すビジュアル資料整理・分析の成果が発表され、いずれも次年度以降に本格化する予定の現地認識と現地社会展開の相互連関における検討の前提的知見の獲得が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展していると判断した理由は、以下の通りである。 1.本研究遂行の前提となる資料環境の確保ができたためである。本研究の成否を大きく分ける重要な前提的条件は、現地認識の多様性を示すデータを如何により多く収集し、その内容を多様な視角から利用可能な形で整理しておくかにかかっている。この点を照らして、本年度に、当該期現地社会で最も多くの読者を獲得していた新聞(『満洲日日新聞』)と総合雑誌(『満蒙』)から関連記事を摘出・整理しデータベース化できたことは、今後の研究進捗を支える資料環境整備を確保する大きな成果だったと位置付けられる。 2.また、『足跡/亜東』のデータベースの整備も、次年度以降の考察を、より充実したものとする上で大きな成果と位置付けられる。20世紀前半において現地認識形成に写真などのビジュアル資料が大きな影響力を持っていたことは周知の事実であるが、満洲事変前の中国東北地域ではその重要性が指摘されながらも具体的な資料を利用した検討が十分なされてこなかった。同誌は、写真というメディアを正面に据えた、最初の本格的な定期刊行物で多くの読者を獲得しており、その利用は従来の研究上の空白を埋めていく上で貴重なデータを提供するものと期待でき、次年度以降の研究進捗に資するところ大であると言えよう。 3.加えて、歴史継承体としての現地社会構造の把握も次年度以降の考察における前提を確保するものであり、絵葉書などのビジュアル資料の整理・分析は次年度以降に今年度実施した文献調査成果と照合させることで、貴重な知見を提供する可能性を持つものであり、いずれも本研究の進捗に資する成果と位置付けられる。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度以降の研究は、次の方策を通じて推進していく予定である。 1.令和5年度以降は、初年度で収集・整理したデータ(次年度以降も随時追加)の分析・考察を通じて、日中双方のメディアが如何なる相互連関と相互変容を遂げていくのかを明らかにしていく。より具体的には、研究代表者の松重が、中国側メディアの経営・活動実態と記事内容の分析を行い、その成果を本研究開始前に松重が集積・整理した日本側メディアの記事情報と対照しつつ、日中メディアが如何なる連関性を持ち、それが時系列的に如何に変容しているのかを実証的に把握する。また、研究分担者の塚瀬は、歴史継承的に形成された現地社会の実態を、初年度の成果と対照しつつ、日中メディアの現地認識と現地実態の差異と、その発生因を分析・解明する。加えて、研究分担者の毛利は、絵葉書などの非文字データが包含する情報の摘出と、それが文字データと如何なる関連性を有しているのかを分析し、各メディア間の相互連関の重層的構造を明らかにする。 2.また、最終年度は、以上の成果を総括し、日中双方の現地メディアの現地認識形成実態と、それが同地域の展開に如何なる影響を与え、それは従来の同地域の歴史像再構成に如何に結びつくものなのかを追究する。 3.なお、以上の一連の研究過程において収集・整理された資料に関しては、適宜データベース化して適宜Web公開し、成果の社会還元を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述した通り、初年度においては次年度以降の研究遂行の前提となる資料環境整備を精力的に進めたが、当初は日本側だけでなく中国側の資料も収集・整理する予定でおり、台湾(中央研究院近代史研究所)もしくは中国(遼寧省档案館)での調査と資料収集も予定していた。しかしながら、新型コロナ感染症の断続的な流行により所属機関における渡航制限などの規制のため、海外での資料調査は断念せざるを得なくなり、繰越額が生じることとなった。 令和5年度は、新型コロナ感染症に伴う様々な規制が緩和されることを前提に改めて前述した海外での資料調査・収集を行う計画である。なお、規制緩和なされなかった場合は、関係複印資料(含デジタル資料)や図書の購入費あるいは資料複写費にあてて満額使用を行う予定でいる。
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